"BEPS"。
国際税務を語る時、この略語は頻繁に登場します。
では一体何を意味していることなのでしょうか?
英語の頭文字を解いていきますと、このBEPSと言うのは「Base Erosion and Profit Shifting」と言うもので、和文にすると「税源浸食&利益移転」となります。
具体的には企業が、各国の課税制度の違いを利用することで税率の高い国(例:日本や米国)から無税又は低い税率の国(香港、シンガポール、その他BVIやセーシェル、サモアなど)へ所得を移し、企業が納める税額を最小限に抑えると言う行為を指します。
2012年6月、OECD(=経済協力開発機構)租税委員会本会合において、米国からこのBEPSが法人税収を著しく喪失させているとの問題提起がなされたことから、そうした世界の趨勢に対して対抗先を講じる為に「BEPSプロジェクト」がスタートしました。
しかしながら、このプロジェクトから出て来た報告書上では、これらの世界的な企業達が講ずるスキームは何れも合法であり、故にベースとなっている国際課税原則そのものを見直さない事には対応出来ないと結んでおります。
ちなみにひとつ、代表的なBEPSの事例として挙げさせて頂きますと、スターバックスが採用したものがあります。
彼等は英国に進出してから最初の14年で約3840億円の売上を計上していましたが、支払った法人税は僅か11億円程度(しかも、2008年以降は全く英国の法人税を支払っていない)に過ぎません。
そのスキームの構造としては、知的財産権や商標権の使用料を巧みに利用する事(例:オランダの本社に支払ったり、スイスからコーヒー豆を仕入れたり等々)で(当時高かった)英国での法人さまざまな方法で国外転出させ、結果として法人税の低い国に移す行為を行っていました。
これらのBEPS行為は、合法であるが為に糾弾されるものではないのでしょうが、しかしながら世論的には、こうしたものは税制度&租税条約の隙間をついた手法と捉えられてしまうのは事実であり、今後も看過されそうにありません。