アジア一の自由市場である香港は、日本のお客様にとっても魅力的な海外進出対象地域のひとつとなっていますが、実はこうした進出先を論ずる前に重要なことは何なのかと申し上げますと、それは一にも二にも、「日本のルール」です。特に香港やシンガポールのようなオフショア対象の地域・国への進出を目的とした場合には、税制上の足枷などをしっかりと事前に"見える化"して検証しておく必要があります。
例えばですが、今から1年前の平成26年度の税制改正において、日本は従来とは異なる基本的なスタンスを一部変更致しました。
それは"総合主義"から"帰属主義"への変更です。
一見すると、これはあくまで国内源泉所得上での適用範囲の変更と言う点で帰結する感を受けますが、実はこれは海外案件にも抵触する内容のものなのです。
では具体的にどう言う事なのでしょうか?
《事例:日本居住者が投資用のペーパーカンパニーを海外に作った場合はどうなるか?》
さて、ここで言うこのペーパーカンパニーとは一体"どこで"事業をしているのでしょうか?
仮に主体が実体のないこのペーパーカンパニーであったとしても、この法人は列記とした事業=投資に関する事業を行っていますので、(理屈上では)どこかに事業を行う「場所」が存在しなければなりません。
日本以外に事業を行う場所がない場合は、その代替的な考え方として、その法人の代表者や役員の住所地等が「恒久的施設」に該当するとの認定を受ける可能性があり、ここで日本で法人税の申告が必要となることも考えられます。帰属主義の視点と言うのは、まさに"所得を生み出す会社(個人)"にすべてが紐付いていると言うところなのです。
また、同様に国外所得免税となっている地域に投資用のペーパーカンパニーをお持ちの場合で、且つ、日本にこうした恒久的施設有すると認定された場合には、現時点でも、海外で税金が課税されていない所得については、日本の法人税の申告義務があるとされます。
例えば、香港法人を通じてシンガポール法人に融資をしているなどの場合、シンガポールでは貸付金の利子に課税していませんので、日本に恒久的施設があると認定されると、日本の法人税の申告義務が生じることになります。