海外在住者にとって自身の居住判定は納税の際の最大の焦点です。特に香港やシンガポール等と言った軽課税地域・軽課税国に在住される方やその市場を利用される方にとっては場合に寄っては"死活問題"に発展する可能性があります。事実、過去に於いて国側と一般企業が最高裁まで争った事件(武富士事件)などもありましたがこれもその時最大の焦点となったのが、この"居住者判定"を巡る解釈でした。
では現在、日本におけるこの「居住者」判定とは一体どのように定められているのでしょうか?
日本税法の規定(所得税法)では、先ず日本の"居住者"について次のように定められています。
1.日本に住所を有する者
2.国外に1年以上居住することが通常必要となる職業を有する者
では実際の具体例としては如何でしょう?
一般的な事例として上げさせて頂くのは、会社従業員として長期で海外出向者として海外関係会社等で働かれる場合です。実はこうした場合、海外での滞在期間が最初から1年以上となる場合は自動的に上記の②に該当する事になり、出国と同時に"非居住者"になります。しかしながらこの場合、出向期間の途中で急遽帰国するようなことが決定した場合には、その帰国した日から日本の居住者に戻ってしまう事を留意して置く必要はあります。
では今度は同じ長期海外出向と言っても海外関係会社の役員などと言うステータスで出向した場合はどうなるでしょう。
法人の役員は、先ほどの雇用契約を前提とする従業員とは異なり、会社との関係は委任契約に基づくものとされ必ずしも出向先の関係会社の事務所に勤務することが条件とならない場合があります。こうしたケースに相当する場合は、その関係会社への勤務実態により居住者か否かを判定することになります。
つまり、出向する関係会社における勤務条件等をみて、関係会社に勤務することが常態である場合には、従業員と同様に上記②により、出向時から非居住者とみなされることになり、そうでない場合には、上記①により、国内に住所を有数するか否かにより居住者か否かの判定を行うことになります。