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何故、HSBCは英国に留まることを決定したのか?

更新日:2016年03月02日

旧正月明けの最初の週となった2月14日、英金融最大手であるHSBC(HSBCホールディングス)は昨年から同グループ内で検討が成されていた本拠地移転問題に関して今後も"英国に本社を置くことを決定した"と発表しました。

 

HSBCの本社移転問題、これは元々英国財務省が昨年3月に新年度予算を議会へ提出した際、銀行税の"税額アップ"を示唆した事に発端があると言われております。

 

課税強化は昨今どこの国でも行われているトレンドではありますが、この「銀行」そのものを狙い撃ちして来る英国の政策については流石のHSBCも株主対策上何もしない訳には行かず、また商売上もEUやアジアを主戦場とする国際的金融グループであるだけに、従来からある英国国内世論(EU脱退後押し)などに嫌気がさしていた事などもこの問題に現実味を帯びる要因で御座いました。

実際、昨年6月には中国の一大経済発展モデル地域と指定されている中国珠江デルタ開発プロジェクトに対して、実に2300億米ドルもの資金を投下すると発表した際は、同社本社のアジア移転(=香港移転)はほぼ"既定路線"であるかのような印象すら市場に与えました。

 

では何故この段階になって上記の様々な要素を乗り越え、結局元の鞘に収まる形となったのでしょうか?
これはやはり中国市場の大幅な成長鈍化が筆頭に上げられます。政策での誤った判断が巻き起こしたといわれる中国不況の影響は凄まじく、上海と深センの株式市場上場企業300銘柄(CSI300)は年初から約16%下落するなどの影響もあり、JPモルガンのアナリスト部門の予想ではHSBCが中国に持つ不良債権比率が現在の2倍超まで上昇すると言う向きも御座います。

 

また足元が沈下しつつある中国・アジアに英国から移転すると言う代償は、大規模な投資銀行業務やトレーディングなどを筆頭とした欧州(或いは米国)のグローバルビジネス最前線からの撤退に等しい判断であり、場合に寄っては同エリアの投資家から調達する資本に対してコストが高騰する恐れが出ると言うデメリット。


更に(冒頭の懸念材料となった)銀行税に対する英国政府の方針転換(銀行税廃止)等々...。こうした様々な事が約半年の間に矢継ぎ早に発生した事により、傾き掛けていた同社の本社移転の話と言うのは、結果として『白紙撤回』となった訳です。しかしながら同社CEOのスチュワート・ガリバーは、中国株式市場の混乱を"短期的な問題"と見ているとの事もあり、場合によっては近い将来、再びこうした関連のニュースが同社から出て来るかも知れません。

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