日本の給与体系というのを改めて客観的な視点で眺めて見ると、それが「総額」前提となっていることが分かります。つまり最初にその額を決めてから後で様々な支払い項目となるもの(例:社会保険料や給与所得税などの税金)を引いて行くというものです。
実際のところ、そうした体系で運営されている中から(より大きな商機を創出する為に企業は海外進出を目指す訳ですが)、先兵となる駐在者が海外に赴任となる訳ですが、給与視点で考えますと、多くの企業は国内で行われているこうした「総額」からのアプローチではなく、最初に「手取額」を設定し、その後税金や保険料などと言ったものを加算して行くと言う、所謂、「グロスアップ計算」をベースに考える企業が一般的とのことです。
そうする主な理由と言うのは赴任先国が敷いている社会保険制度などへの"強制加入"が背景としてあるからです。
香港のように、自国において年金などの制度に加入をしている駐在員については(香港の制度である)MPFへの加入は免除されますが、これが、例えば中国などになるとこうした制度に対する特例措置と言うものは存在せず、一般従業員と駐在員は同じ扱いとなって行きます。こうした形になってしまうと国内でのシステムである「総額」で支給している場合、その駐在員だけが"社会制度"に対して二重加入してしまうことになってしまうので具合が良くありません。
つまりこうした事情ゆえに、総額計算体系からグロスアップ計算体系へのシフトを行うことに意義というものが出てくる訳です。何気ない給与支払いの一面ではありますが、こうしたところにも企業人事の"苦労"が伺えるかのような部分ですね。