東京国税局は今年、新しい局長を迎えることとなりました。こうしたトップの刷新と言うものはまさに局としての「決意」を内外に示すものであり、今回着任した藤田東京国税局長は今後より一層の課税強化、それも超富裕層を対象とした課税強化を進める所信を表明しました。
東京国税局内の東京局では平成26年事務年度から課税管理及び調査を専門とする部署を設置しており、特に多額の資産を保有する納税者(=超富裕層)を「重点管理層」としてターゲット設定をしています。その調査は直接の"標的"となる超富裕層だけでなく、その関係者や関係法人を含めて情報を収集し、分析・検討を行っているとのことです。そしてこれらの分析などの結果、「調査」が必要と省内で認められた場合は組織的な調査チームを組成し"ターゲット"の囲い込みを行うようです。
今年の7月7日から着任した藤田局長は、先ず富裕層が最も多いとされる東京局で重点管理富裕層の管理・調査組織の人員(国税実査官及び国際専門官等)の増員を決定することでこれまでの調査は勿論のこと、引き続き所得税・法人税・資産税関係の調査を推進し、課税上、"問題がある"と認められた場合はより突っ込んだ総合調査の実施を具体的に指示したとのことです。特に今事務年度については超富裕層問題に対する調査事務量を優先的にするとのことで、多くの"手零れ"案件を最小化することを目指しています。
また富裕層、特に"超富裕層"と言われる層に対しては、より複雑で戦略的な租税回避策を取っているパターンが多い為、各々のスキームがこれまで以上に広く、そして深く海外にまで及んでいることが実状であるとの理解から、より一層の国際的な租税回避事案や国際的な脱税事件に対して(あらゆる機関を通じて)情報の収集に努め、実態の把握を推進するとの決意を表しています。
国税局のトップがこうした異例の発言を行う背景と言うのは、今迄、各国の抱える政治・税務上の問題などから中々"足並みが揃わない"などの理由に遅々として進まなかった世界的な租税協定(条約)が、来年(平成30年)を機として第一回の共通報告基準、"CRS"(Common Reporting Standard=自動的情報交換制度)の導入によってようやく世界的な体制が整って来たことに寄るものだからです。
そして、こうしたグローバルなスケールでの新ルールの発足初年度に東京国税局長となった藤田氏にとっては、この問題を軽視することは出来ず、故にこの"超富裕層"を個別ターゲットとした課税強化を宣言した訳です。当然のことながら、この分野に藤田氏が自身の"モットー"と標榜している「超変革」を持ち込んで行くことは必至でしょう。
さあ、果たしてどのようなアイデアが現場局員まで浸透して行くものなのでしょうか?
超富裕層を対象とした課税体制の強化。
殆どの納税者にとっては"圏外"となるテーマではありますが、その手腕が対象者層(超富裕層)に与えるインパクトが一体どうなるかは"見物である"と言っても良いのではないでしょうか?