アメリカのトランプ大統領が大統領選の時から掲げていた公約のひとつである"大幅な減税"。どうやら彼はこれを本気で行うようです。今月(9月)の27日、インディアナ州でこの税制改革案を発表したトランプ大統領ですが、仮にその内容が承認され、施行されるとなると以下のようなものとなって来ます。
連邦法人税→現行の35%から20%への引き下げ
個人所得税→現行の7段階税率を3段階へ簡素化するほか、最高税率(39.6%)を35%に修正
個人事業主&パートナーシップ制に対する税率(パススルー企業対象)を25%に。
また所得については以下の内容も盛り込まれています。
単身世帯年収→12,000ドルまで非課税
共働き世帯年収→24,000ドルまで非課税
実際、この規模の減税が実践されるとなると、これはレーガン政権で実施した時以来のものとなる為実に30年振りの事になる訳ですが、当然こうした税制改革案と言うのは議会での長い審議が前提でもある為、この税制改正の正式決定には数カ月に及ぶと言う見方が濃厚です。
では実際、アメリカがこの税率を実施したとしたら一体どのような"反応"が世界各国から出て来るものでしょうか?
先ず、我国(日本)の税制の大枠と言うものは元々アメリカのそれをコピーして出来上がっていると言われている為、この抜本的な税制の変更が起ころうものであるならば、日本の国税局にとっては大きなチャレンジになるかも知れません。但し、このアメリカでの税システムをベースとして、更なる複雑極まりないものを日本(国税局)は作ってしまった功罪もあることと、また税制改革の余波が現時点では全く読めないと言った点などから、しばらくは"静観を決め込む"と言うスタンスが現実的な選択肢となるのではないでしょうか。
では香港やシンガポールと言ったオフショア地域やオフショア国はどのようなスタンスを取るでしょう?実はこれらの地域・国は既にこうした大国の税務トレンドが下方修正化している点を察知しているかのような対応策を打ってあり、その為の一手を既に構築・スタートしています。
それはCTC(財務統括拠点)の設置と言う回答に帰結します。
このCTCを推進することで、香港やシンガポールは今後、アメリカや他のオンショア国(日本、ドイツ等)が一斉に税率を下げるような場合、適用条件の"緩和化"を測って行くことになるのではないかと見られています。
もっとも、究極のタックスヘイブン(別名:タックスパラダイス)であるような先(英国領ヴァージン諸島<BVI>やセーシェル、サモア、パナマ等)にとっては、アメリカやイギリスなどがシフトした(しつつある)軽課税国化に対しては"税率ベース"自体がゼロであるが故、"痛くも痒くもない"と言うのが正直なところです。
トランプ大統領の意図通りに果たして事が進むのか?この税制改正での議会とのやり取りについても両者の力関係を探る意味に於いて一興の価値があるかも知れません。