先般、シンガポールでは世界的スポーツイベントのひとつであるF1グランプリが3日間に渡って開催されました。シンガポールGPは"夜間開催"が目玉のひとつであり、これはグランプリカレンダーの中でも中々設定できないエンターテイメントのひとつとして世界中のモーターレーシングファンの間で評価されています。
一方、開催側であるシンガポールの意図と言うものは、こうした姿勢を世界中に発信することで、より多くの投資家や富裕層を彼の地に呼び込もうとする重要なプロモーション活動と言うものがその骨子としてあります。
香港もこうしたシンガポールの姿勢に感化されたのでしょうか(?)、昨年度、フォーミュラEと言うモーターレーシングのイベントを開催し、テコ入れに腐心していると言うながれです。
さて、こうした面だけでのものではなく、実際のビジネスのフィールドとしてこの両者を見て行きますとどうなるでしょうか?
一般的なイメージとしては、中国国内へのゲートウェイとされる香港と、東南アジア・西アジアへのゲートウェイとされるシンガポールとなる訳ですが、ここでよく上がる質問と言うのはこの香港とシンガポール、進出するとしたらどちら適切なのか?と言うものです。
実際の話、ビジネスの目的によってこの質問に対する回答は分かれることになるのですが、比較をして見ると更にその方向性に関してこの両者は非なる部分もそれなりにあるのだとお分かり頂けることでしょう。
⑴「ゲートウェイ」としての機能について
これは上述の通り、香港は中国へのゲートウェイとして機能が充実しており、シンガポールは東南アジア・西アジアへのゲートウェイとして機能が充実しています。企業の中国への投資意欲は以前ほどのものでなくなっているのは確かですが、これはひとえに中国一辺倒への見直しを求める声によるものです。
しかしながら、中国と言う国は世界でも有数の巨大市場であり、中国から撤退をすると言うのは、換言すると、負け戦を受け止めると言うことに等しい部分があります。故に香港を活用した「進出」が有効となるのです。つまり中国ビジネスの基本的かつ重要な座組みを香港で仕上げてしまい、中国には香港から進出し、香港人や台湾人のパートナーと共に市場開発を進めて行くと言った方法です。
こうした動きをさぽーとするような周辺協定は既にこの地域には用意されており(CEPA)、更に香港・中国間には、香港企業に与えられた優遇政策もありますので、これをうまく活用することも有効です。もちろん、香港は租税上のメリットがふんだんにありますので、事業資産の管理地としての安定性は抜群であると言う要素見逃せません。
一方のシンガポールはどうでしょうか?こちらは香港と比較した場合、東南アジア諸国との租税協定がより充実しています。つまり東南アジア・西アジアへの進出における統括機能は、シンガポールが非常に優位性を持っており、一時期に於いて日系企業はその統括機能に着目して(我先に!)とばかりシンガポールに進出して行きました。
事実、シンガポールも香港同様に租税上のメリットが大きいわけですから、東南アジア・西アジア各地で稼ぎ出した事業資産の管理地としての安定性は申し分ありません。
(2)次に国家(香港は特別行政区=地域)としての「運営方針」についてはどうでしょうか?
香港は所謂、完全自由市場、自己責任経済体制を敷いています。これを"レッセフェール"と言います。政府は必要最低限のルールを決めますが、後は民間自治、自己責任に全てをゆだねると言うものです。従って香港政府は基本的に企業には干渉せず、よって企業支援の施策は極めて"限定的"です。つまり、企業はみな"自分の力で生き抜いて行きなさい"と言うのが基本的なスタンスなのです。
一方のシンガポールですが、こちらは計画経済であり、きわめて独裁的に指導者がルールを決めています。そしてこのルールに国民を従わせる形で多くのことが成立しています。従って外からシンガポールを見た時などの場合は、政府のシンガポール人への"過保護振り"が話題になってしまうくらい、シンガポールは統制国家であると言えるでしょう。
これはまた個人だけに留まる訳ではなく、当然、企業への支援も同様です。政府は何かと企業への経済活動に介入をするわけですが一方で支援プログラムも充実しており、この保護の下でシンガポール現地法人は積極的に事業を展開して行くわけです(勿論、ここまで力を入れるのですからルール違反を犯す者に対する処罰は尋常なレベルでは無い事も、同時に留意して置く必要があるのは否めませんが...)。
以上、簡単ではありますが、両者比較を試みて見ました。
さて、貴方が仮に「香港シンガポール、どちらがいい?」と問われたとした場合、一体どちらを選ぶことになるのでしょうか?