海外子会社が特定のっ国や地域で事業を行う必要がある場合、基本的にはその国の配当源泉税率が適用されることになりますので、日本の親会社が直接配当を受ける際、ここに纏わる税務コスト(配当額 x 現地配当源泉税率+1.5%)を引き下げると言う余地はありません。
しかしながら、この配当源泉税率を引き下げると言う点で手段が無いのかと言うとそう言う訳ではありません。換言すると、海外に中間持株会社を設立することにより、日本の親会社が直接配当を受ける国を配当源泉の無い(または低い)国に変えてしまうことで対応することが出来るのです。
当然、これを行うと配当の経路は変更されることになり、配当源泉税の負担が(結果として)変わって来ることになります。
例えばA国に所在する事業子会社のA社からの配当源泉税率が10%だとすれば、日本の親会社がこのA社から直接配当を回収してしまうと、この10%の部分は日本の親会社の税務コストとなってしまいます。
そこでB国に中間持株会社であるB社を設立してA社株式を保有するようにした場合、A社からの配当はB社経由で日本の親会社に還流されることになります。
仮に(1)A国とB国の間の租税条約で配当源泉税が免除されており、(2)B国に国外配当免税制度があるのであれば、結果としてこのスキーム上ではA社からB社への配当には何ら課税される理由がなくなってしまうのは一目瞭然です。
また(3)B国が配当源泉税を課さない国であれば、日本への配当に当たっても源泉税が課されないことになり、A社が稼得した利益はほぼ無税扱いで日本の親会社まで還流することが可能となります。
但し、こうしたスキームを構築して使用すると言うことは、税務的な視点から見ると「トリーティーショッピング規制」に抵触する可能性があることを注意して置く必要があるでしょう。
この"トリーティーショッピング(条約漁り)"とは、本来であれば租税条約の特典を享受することが出来ない者が、租税条約の一方の締約国に中間会社などを置くことで源泉税の減免等の特典を受ける行為のことを言います。
そしてこれを安易に行わせない為に規制するものが「トリーティーショッピング規制」と言うもので、この規制には(ペーパーカンパニー等を認めない)と言った事等々、様々な条件を課しているものになっています。
因みにこうした租税条約漁りで一番挙がる国(地域)と言うのはシンガポールや香港等ではなく、欧州の一国、オランダであると言うところも中々 面白い事実です。