「香港人が何故『金融』と言う視点であれ程ガツガツしているのか?」と言うことに対してのヒントは意外とこうしたことにあるのかも知れません。
それは、彼らは我が国のような年金制度が公的に初めて導入されたのが今から僅か18年程前、2000年のことだったのです。「強制制度」と言う位置付けで導入されたこの制度ではありましたが今ではすっかりと金融景観のひとつとして馴染んでいます。
では現在のこのMPFの内容ですが、やるとなると一体どのようなものなのでしょうか?
MPFは、雇用主と従業員の双方が給与額の5%ずつの合計10%を毎月積立て行く制度です。ではその加入対象者などを筆頭とした条件と言うのは何でしょうか?
1)加入対象者
・18歳以上65歳未満の従業員
・雇用期間が60日を経過した従業員(これにはパートも含みます)
・香港以外の場所で公的な年金制度に加入をしていない従業員
2)加入免除対象となる者
・18歳未満65歳異常の従業員
・雇用期間が60日未満の従業員
・香港での労働ビザの期限が13ヶ月未満の従業員
・ORSO(Occupational Retirement Scheme Ordinance)に加入している従業員
・香港の永久居民(Permanent VISA Holders)でなく、且つ、自国の年金制度に加入している従業員
こうした括りの中には日本人の従業員でこのMPF加入対象となる者がいますが、それは条件として香港でMPF以外の公的年金や日本の年金に加入していない者であるとか、香港で永久居民である場合となります(ちなみに香港の永久居民であった場合は日本の年金制度に加入をしていたとしても、香港での加入義務は発生します)。
3)MPFの引き出し及び解約
MPFで積み立てを行い、運用会社で資産を殖やした後は、MPFの"出口"を意識するのは当然のことです。では一体どのようなタイミングや事由でこうしたことが発生するのでしょうか?
・65歳の定年到達時
・60歳から64歳までの早期退職時
・香港から永久に離れる場合
・障害者になった場合
・MPFの残高がHKD5,000未満となり、且つ今後も就業の予定が無い場合
・死亡時(遺族に配分)
それ以外にも、例えば末期疾患で余命が12ヶ月未満と診断された場合などもMPF解約の条件として認知されます。
では、そもそもこのMPFの積立額の計算方法と言うのはどのような形となるのでしょうか?
4)積立額の計算方法
・雇用主と従業員の双方が、従業員の給与を前提としたその5%(正し、上限はHKD1,500まで)ずつを共に拠出する形となります。具体的には、給与額がHKD30,000の場合はHKD1,500ずつ双方から毎月積み立てを行うと言うものです。
・月当たりの給与額がHKD7,100未満の場合の従業員については雇用主とのみが5%を拠出することになり、従業員は拠出を行う必要から免除されます。
・毎月の積み立ては雇用主が従業員の給与から従業員分を天引きする形で徴収し、運用会社に積み立てます。
5)税制上のメリット
・従業員は強制積立分については全額税金の控除を受けることが出来ます。正し、任意積立となる部分に関しては控除対象外となりますのでご注意ください。
6)その他
・従業員の転職が発生した場合は、従業員は自分の意思でMPFを他の運用会社に移管することが可能
・従業員は年に一回、自分の積立分を現在の運用会社とは別の運用会社に移管することが可能。
MPF導入時には積立額の上限がHKD1,000であったことがありましたが、導入後に発生した伝染病(SARS)や金融危機などを背景としてこれでは金額が"少な過ぎる"と言う論点が発生し、その結果、HKD1,500に引き上げたと言う経緯などもあり、この制度は見直しが定期的に行なわれています。
積立金額自体が少ないとはいえ、それでもいきなり50%も上げてしまう所などは如何にも香港らしいと言えるかも知れません。