前回(1)では香港の医療機関の構造と受診の際の段階、そして支払いのやり方についてご案内させて頂きました。今回は同じ医療の中でも特異分野であり且つ日常で発生する可能性が大きい歯科医療についてご案内させて頂くと共に、健康診断利用の際に知って置くと便利な情報についてご案内させて頂きます。
先ず、香港の歯科医療ですが、歯科医師自体は一般歯科医(Dental Surgeon)と専門歯科医に分かれています。それぞれの役割は異なっており、これも前回(1)で記載した形と同じように、一般→専門と言う形での段取りを踏みます。つまり、一般歯科医の診察を受けた患者は、一般歯科医が『必要』と感じた場合に専門歯科医への紹介が行われると言うスタイルで機能していると言うことです。
例えば、虫歯による細菌の感染が神経まで達してしまったような場合は歯の根幹(神経)治療の専門家を登用せざるを得ませんし、親知らずの抜歯やインプラント治療と言った場合も専門医の領域と考えられており、これは日本と同様の処置を香港でも取っています。
勿論、専門医の治療費と言うのは一般のそれと比較しても更なる高額費用となりますし、保険でのカバーが出来ないと言う分野でもあるのでこうした状況に陥った場合は日本に帰国をされるなどして治療をされることを検討される必要があるでしょう(但し、香港の歯科治療技術は日本と較べてどのくらいの水準にあるのかと言うと、技術的には日本と同等かそれ以上と考えられています)。
では今度は香港の健康診断事情についてご案内します。香港の医療と言うのは歴史的に英国統治の時代に基礎が築かれている為、欧米の最先端医療機器と医療方法が実践されている環境であると言えます。
従って健康診断でもこうした最先端の診断方法が用いられており、中には受付から手続き、診断やフォローアップのケアまで日本語で対応してくれる病院やクリニック、或いは日系健康診断企業などもある程です。
こうした中で駐在の方にとって注目して置くべき事と言うのは、日本の健康診断制度を利用すると言う事です。日本のこの制度というのは法律で義務化していると言うところであり、事実としてこの健康診断システムを日本の海外駐在員は準用出来ると言う点が世界的に見ても稀有な事なのです。
また海外駐在中は駐在員の家族も事業所の費用負担等で健康診断を受けれる場合もあるので、これを機会としてこの制度を有効に活用される事で家族の健康維持管理や健康増進に活用されると良いでしょう。
実際のところ、企業としてもこうした事を海外でも積極的に奨励するなり執り行って置くことは、『駐在員死亡』といった様な万が一のケースが発生した際のリスク管理・予防対策に相当する事に繋がります。
逆に言うと、こうした「意識」を本社側の人間が予め醸成・共有して置く事で、未曾有の事件や事故に対して企業の立場をプロテクトして行く事になるのです。