「仮想通貨」に置ける税務は以前のブログでも取り上げて参りましたし、今後も何かにつけて触れて行かなくてはならないもののひとつでしょう。海外での取引所で仮想通貨をベースにと言う方々からの問い合わせ等も絶えない現在ではありますが、日本在住者にとってプライマリー・コンサーン(=主体的検討事項)と言うのは一にも二にも国内事情。今回は仮想通貨譲渡時の所得金額計算方法についてご案内させて頂きます。
(1)仮想通貨の譲渡に係る所得金額の計算
所得金額とは"儲かった金額"のことを言い、売却したことで収入となった額から支払った原価+経費の額を差し引いた金額となります。もう少し詳しく説明しますと売却収入は、売却代金となり、原価は売却した仮想通貨の購入対価と購入手数料の合計額をいいます。この原価の額を税務上では取得価額といい、所得金額は、売却収入から取得価額と売却時の手数料などの経費を差し引いた金額が所得金額となります。
なお、当然のことですがこの取得価額は、仮想通貨の種類の異なるごとに計算をすることになります。
複数回、仮想通貨を購入した場合の取得価額の計算には、移動平均法と総平均法の2種類の方法があります。移動平均法とは、売買の都度、単位当たりの取得価額を計算する方法で、総平均法は1年間に買った1種類の仮想通貨の取得価額を平均して計算すると言うものです。
この2つの計算方法を、例えを交えて説明すると以下の通りとなります。
月曜日にお酒1升を2100円で買ってきて、その晩と翌晩(火曜日)で5合飲み、水曜日を休肝日としつつ、同じお酒5合を900円で買い、残りのウェークデイである木曜と金曜にそれぞれ1合ずつ飲んだとします。
移動平均法上は売買の都度単価を計算することになりますので、この場合には、買ってきた都度、お酒を飲んだ都度、単価を計算することになります。まず、月曜日に買ってきたお酒は1升2,100円ですので、1合当たり210円です、このため月曜と火曜に飲んだお酒は1合当たり210円で5合飲んでいますので、1050円分飲んだことになります。水曜日に残っているお酒は1合当たり210円の5合ですから、1,050円となります。水曜日に5合を900円で買ってきますと、あわせて1升で1950円となり、1合当たりの金額は195円ということになります。これを木曜と金曜に1合ずつ飲んでいますので二日で390円分飲んだことになり、1週間で飲んだお酒の金額は、1050円に390円を足した1,440円ということになります。残っているお酒は8合で、1合当たり195円ですから、1560円ということになります。
では総平均法の場合はどうでしょう?
この場合は月曜と水曜に買ってきたお酒は1升5合で、払った金額は2,100円と900円の合計3000円で、1合当たり200円です。飲んだ7合は1400円で、残っているお酒は1600円ということになります。
つまり、仮想通貨では、飲んだお酒の金額が譲渡原価で残っているお酒の金額が保有している仮想通貨の取得価額となる訳です。上記では1週間の例を挙げましたが仮想通貨の売却原価を計算する際には、暦年1年を通じて計算を行うことになります。
以上、計算方法はこのようになりますが、移動平均法と総平均法の違いは、相場が下がっている場合には、移動平均法の売却原価が高くなります。計算例の場合の飲んだお酒の金額では、お酒が安くなっていますので、飲んだお酒の額が40円高くなっています。一方、相場が上昇傾向の場合には、逆に総平均法の売却原価が高くなります。
尚、国税庁では移動平均法を原則法とし、総平均法は継続適用を要件としています。計算のしやすさからすると、買った分だけ考える総平均法のほうが楽ではありますが、1年経たないと幾ら儲かったかの計算ができないといった問題点があることには注意しておく必要があります。
次回は仮想通貨を巡る「雑所得」、また同一銘柄のものを同数、同時に売り買いした場合の税法上の解釈についてご案内したいと思います。