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駐在員として香港での雇用に関して知って置いた方が良いルールとは?
更新日:2018年08月13日
適切な人材の確保は、香港は言うに及ばず海外事業展開上、必須事項と言えるものの中のひとつです。
香港で現地スタッフを採用する場合は、社員に要望する「業務遂行能力」を明確にして置くことがとても重要ですが、同時に社員に対する雇用条件についてもしっかりと書面で通知をして置くことも重要なファクターです。
特に給料に関する部分は雇用条例等で最も保護されている項目でもあるので、雇用後の労使間で発生してしまうようなトラブルを回避する為にも、詳細にわたる雇用条件を書面契約にして置く必要が会社としてはあります。
これは香港と言う地域が、伝統的に口頭契約が成立してしまう場所でもある為、軽々しく約束などをしてしまうと(場合によっては)それが発端となって訴訟等に発展してしまう可能性もあるからです。
では、具体的にどのような項目を網羅して置く必要があるのでしょうか?
最初に挙げられる項目と言うのは従業員の労働時間でしょう。意外に思われるかも知れませんが、香港では1週間あたりの所定労働時間に関する規定が存在していません。
これは即ち、労使間の合意によって自由に時間を決定出来ると言うことであり、故に慎重に討議をして置く必要があります。ちなみに当地の日系企業では1週あたり約40時間目処となっているようです。
次に決めて置く必要があるところは、休日と有給休暇の2つです。雇用条例上では年間12日の法定休日、また継続的契約となる従業員に対しては7日毎に1日の休息日の付与が規定されています。
例えば雇用主が仕事の事情で従業員を法定休日に就労させるようなケースが発生した場合、雇用条例では雇用主は従業員に対して振替休日付与義務が規定されている為、その点を失念してはなりません。
更に原則として、雇用開始後12ヶ月を経過した時点で年間7日の有給休暇を付与する義務もあります。尚、この年次有給休暇は勤続年数に従って毎年付与すべき法定最低日数が14日を上限として増加して行くことになります。
また、こうしたことに加えて香港ではこの地域独特の風習があります。それは台風や豪雨に対する警報です。"シグナル"で表わされるこの警報が発令された場合、香港の労働局(労工処)は企業に対して一定のガイドラインを設定しており、そちらに沿った運用を期待されます(但し、法的な拘束力はありません)。
では次に賃金と年末手当についてはどうでしょうか?
先ず香港における賃金は、(他の国や市場同様に)職務や業種、市場環境によって決定されるのが一般的ですが、その金額の大小となると、より賃金が多く支払われる傾向がある業界と言うのはやはり金融です。
次が、資格保有がものを言う士業、また香港経済の指標とも言える不動産業界と言うのも狙い目であると言えるでしょう。
香港での年末手当は通称、"ダブルペイ"と呼ばれており、これは基本給の1ヶ月分相当が(通常の月給にプラスして)支払われることになります。
時期的には旧正月前とされているのでこのダブルペイ後に人材市場は活況となるのが例年です(これはダブルペイを貰って新しい仕事(職場)に入ると言うのが香港の従業員間では常識化している為です)が、このダブルペイ自体は法的な拘束力を雇用主に対して与えているものではない為、結果的に労使間の約定によって有無を決定することは可能です。
しかしながら一方ではより優秀な人材を市場から獲得したいと切望する企業はこの制度を最大限活用しているのも事実ではあります。
これ以外に雇用主として押さえて置かなくてはならない分野と言うものは強制制度の加入です。香港で雇用が発生する環境下では雇用主は従業員に対して2つの強制制度を提供する義務を負っています。
ひとつは労災保険(Employee Compensation Insurance )の加入であり、そしてもうひとつが退職積立金、いわゆるMPF(Mandatory Provident Fund)の設定です。これらは香港が成熟した市場である為には必須の項目であり、従って厳格に制度化されています。運用母体は何れも民間保険会社や信託会社、銀行が行いますが、その統括・管理・指示には香港政府が絡んで行くと言う建付けです。
この制度を行わない雇用主は禁固刑や罰金などのペナルティーが適用されますので細心の注意が必要でしょう。