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「仮想通貨」で言う"雑所得"の意味

更新日:2018年08月28日

前回では「仮想通貨」の所得金額には2つの方法(移動平均法&総平均法)があると申し上げました。今回はその所得に関する税法上の取り扱いについて触れて見たいとおもいます。


所得税では所得について利子所得、配当所得、給与所得、退職所得、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類に区分されていることは周知の通りです。この中で最後の「雑所得」については、他の所得に分類されない所得と定義されています。例えば、事業規模に当たらない貸付金の利息、年金の収入などがそれに当たります。

この「雑所得」の所得金額の計算の特徴と言うのは、赤字となった場合の取扱いが制限されてしまうと言う点です。つまり、「仮想通貨」の取引で譲渡損が生じた場合であっても、他の雑所得とは通算できますが、雑所得以外の所得とは通算できないと言う足枷があると言うことなのです。

また、赤字の金額についても事業所得や株式の譲渡に係る所得等とは異なり、翌期に繰り越し控除も認められていません。このように、雑所得と言うものは他の所得に比べて"冷遇"されていると言っても良いのです。

しかしながら、一方では「仮想通貨」の譲渡益が事業所得に該当する場合もあります。「仮想通貨」の売買を単独(=個人)で行っているような場合には、なかなか事業規模とまでは認められないと考えられますが、事業に付随して「仮想通貨」を売買するようなケース、例えば、飲食店を営む方が飲食代として支払いを受けた「仮想通貨」を現金化する際の差損益は事業所得に該当することになると考えられます。

事実として国税庁の質疑応答等を見ますと仮想通貨の所得区分については、"雑所得"又は"事業所得"に該当するとしていますが、インターネットを見ますと、仮想通貨の譲渡益は譲渡所得ではないかといった主張も見受けられたりしている面もあったりします(勿論、営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得は譲渡所得から除かれており、この規定からすると「仮想通貨」の譲渡益は雑所得としていると考えられるのが正論であるとの解釈が強いのは事実ではあります)。

また、「仮想通貨」で利益を上げた人の中には、5年以上前に取得したものを売却した人もおり、このような場合に果たして"雑所得で良いのか?"といった主張もあります。つまり、こうしたケースについては(事実の)認定上の問題として「仮想通貨」の売買をどの程度行ったら営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡なのかどうかの判定が出来ないと言う問題にぶち当たってしまうのです。こうした点での議論の骨子と言うのは、現行の外貨建資産負債の為替差益を雑所得にしていることと同様と言って良いかも知れません。

いずれにしましても、ひとつの枠の中で論じると言う事自体がナンセンスであるのは事実であり、ここはひと先ず国税庁が掲げる「仮想通貨」の譲渡益の定義の通り、雑所得又は事業所得として対応するに越したことはありません。


では、両建て取引に係る諸問題と言う点はどうでしょうか?

法定通貨がそうであるように、仮想通貨が今後より一般的に受け入れられて行った場合、それを利用して同一銘柄の売買の両建て取引を行うことは考えられる訳ですが、ここには問題が生ずるケースがあります。

これは過去、上場株式で問題になった取引の手法のひとつであり、(取引関係等から保有している上場株式が低迷した際)所有者は多額の"含み損"を抱えていることとなり、この"含み損"を実現して課税所得を圧縮しようとする試みのことです。

具体的には、ある株式について売買を同時に同数行うケースで、これによって取引先の株式の保有関係は継続し譲渡損も実現できることになりますが、このような取引について国税当局は、一定の条件に該当するものについて譲渡損を否認していたりします。

つまり、「仮想通貨」についても、社会に於けるステイタスが確固たるものとなった場合、上記の様な形で同一銘柄のものを同数、同時に売り買いした場合には、譲渡損の計上が認められないといったケースが今後出て来ないと言う理由はありません。

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