2018年8月31日、中華人民共和国所得税修正案が可決し、来年の1月1日から導入されることとなりました。変更の内容は以下の通りです。
1.「税務住民」の再定義
今回の改正では"税務住民"と"非税務住民"の定義が見直しをされることとなり、その定義が余りにも極端に変更されてしまった為、これを受けて一部の外国人層及び外国資本の企業間にはある種の動揺が走っています。
何故なら、従前のルール上に置いては、中国に置いて"税務住民"として範疇化される層と言うのは中国在住日数が連続的に5年に到達する者だけであった訳ですが、今回の改正により、その定義が完全に覆され、何と183日に達した段階で"税務住民"とされてしまう為です。
もう少しそれを具体的に掘り下げて行きますと、中国国内に住所(これは戸籍、家庭又は経済的利益による中国国内での習慣的滞留を指します)を持つ個人、または(住所を持たなくとも)一つの納税年度内において中国国内に満183日間在住する個人もこの"税務住民"とされ、この税務住民の義務と言うのは、中国国内で得る所得だけでなく、中国国外で得る所得に対しても課税対象とされる為、納税義務を負うと言うものになってしまうのです。
つまりこれは、言い方を変えると中国国内に足を入れて183日に到達してしまうと駐在(出向)者であるとか出張(例:長期出張)であるとかどうかの状態の話とは関係なく、全ての者が中国での納税義務を負うと言うことになると言うことです。
逆に住所を持たない上に、一つの納税年度内に中国国内での滞在日数が183日を満たさない個人の場合はこのルール上、"非税務住民"となる為、中国国内の所得分だけを納めるだけに止めることが出来ると言う形になります。
ではこの改正案の範疇となる所得の種類と言うものはどのようになるでしょうか?現在、発表された内容を網羅して行きますと、その種類と言うものは1)給与(及び賃金所得)、2)労働報酬所得、3)原稿料所得及び4)著作権使用料所得の4つ(即ち、『総合所得』)を合算して徴収することとなります。またこの施行と同時に控除に関する取り決めにも修正が施されることになります。
例えば労働報酬や原稿料及び著作権使用料の3つの所得項目については先ず20%の費用を控除でき、更に原稿料所得に於いてはこの20%に加えて追加として30%の費用控除を享受できることとなる(計44%の費用控除)為、大きな減税措置を味わうことが出来ると言った具合です。
次にこの改正案が施行される際に直接被害を被る(!?)であろう"対象者"はどの領域になるのでしょうか?
この括りで眺めてみますと、その範疇においては先ず外国企業(例:日本の会社)により中国に派遣をされた者(駐在者or出向者)、中国国内で現地採用されるなどした海外転職者、また出身地からの判断基準も存在していて仕事で中国滞留を半ば義務付けられているような状況にある者(具体的には香港人、澳門人、台湾人等)がそれに当たることになりますが、中でも多大な影響が予見される香港及び澳門居住者についてはこの183日ルール適応に対して他とは違って特別に5年間の特別猶予期間が与えられるとのことです。
以上、今回の改正は日本の企業の中国ビジネスオペレーションの観点から見ても無視出来ないような項目と言え、確りした準備を持って駐在者共々、日数管理を念頭とした運営を行なって行くことが肝要です。これを軽く見てしまったりして被る結果というのは、自社の中国法人が中国当局からの不必要なアテンションの"矛先化"となるだけであり賢明な対応とは言えません。