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楽観視できないタックスヘイブン税制の改定事項が与える企業へのインパクト2

更新日:2018年11月21日

タックスヘイブン税制に関する内容の改正は今後企業の税務上のコンプライアンスに係る事務負担が大きく増加することが見込まれています。先ず最初のポイントとなるのが、「推定規定」と言われる新たな判断基準の導入です。この改定項目が盛り込まれた新しいタックスヘイブン税制に於いては、内国法人は経済活動基準を満たしている旨を書面にて申告する必要はありません。

しかしながら、その代わりに税務調査官に経済活動基準を満たすことを明らかにする書類その他の資料の提出を求められた場合において、定められた期限までにその提出がて出来なかった場合には、その外国関係会社は"経済活動基準を満たさないもの"と推定され、そして課税されることになります。同様に、ペーパーカンパニーに該当しないことを明らかにする書類その他の資料の提出を求められた場合、これも定められた期限までにその提出が出来なかった場合には、その外国関係会社はペーパーカンパニーに該当するものと推定され、課税されることになります。

現行制度下でもタックスヘイブン税制適用除外を受けるためには書類等の保存義務が課せられていますが、この「推定規定」なるものは入っていませんでした。しかし今後はこれが導入されることによって、税務調査時により厳格な対応が行われるようになるであろうことは想像に難くありません。つまり企業にとってはその調査の流れの中で思わぬ課税を受けることがないよう、明確な説明資料を事前に準備しておくことが必要になると言うことです。

さらに改正後は、租税負担割合が20%未満の外国関係会社(経済活動基準を満たす外国関係会社を含む)に加え、租税負担割合が30%未満のペーパーカンパニー等に係る財務諸表等も確定申告書に添付しなければならなくなりました。つまり、税務申告を担当する部署(経理部、税務部等)においては、現行制度ではあまり考慮する必要がなかった(租税負担割合が20%以上の)海外子会社にまで影響が及ぶことになり、これを含めて今後は財務情報等を収集しなければならなくなるということになって参ります。

また、資産性所得の範囲が限定的な現行制度下では、適用除外要件を満たす外国関係会社の所得内容を事細かに把握する必要はありませんでしたが、改正後はより詳細かつ多岐にわたる情報確認が求められることとなって参ります。


例えば、為替差損益一つを取っても、それが事業に係る業務の通常の過程で生じたものなのか、それ以外のものであるのかを確認しなければなりませんし(前者であれば受動的所得から除外)、部分合算対象となる受動的所得については直接費用等のコストを控除できるものもありますが、どのようにして紐付きのコストを特定するのか等々・・・課題として認識されるものはまさに"山積み"と言って良いでしょう。これらに加えて子会社への指示書の作成や、現地の情報を吸い上げるための仕組みの構築にも早急な体制整備が必要となるのは必至であり、企業のコンプライアンス部門の頭を悩ます事項となって行きそうです。

以上述べてきたような新しいタックスヘイブン対策税制への様々な対応について、これから各々の企業は自社の自前のリソースだけですべてを企画・実行できるか否かを検討する必要があります。仮に内部リソースが不足しているような場合には、外部、それも国際的なネットワークを擁する会計事務所などの力を借りることも視野に入れなければ対応できないことは明白であり、そうしたことを軽視すると後で手痛いしっぺ返しを当局から言い渡されるかもしれません。

何故なら今回の改正の骨子は、OECDのBEPSプロジェクトの行動項目のひとつである「外国子会社合算税制(CFC税制)の強化」において議論がなされた内容を踏まえて行われたものである為、その真剣度には拍車が掛かっているからです。

何にせよ、このタックスヘイブン税制だけではなく、これから各国においてBEPSの議論に対応した様々な税制改正が行われて行くことになります。また、各国の税務当局も多国籍企業からマスターファイル、国別報告書(CBCR)等の様々な情報を入手するようになる為、各国における税務調査もより一層きめ細かく厳しいものになると言われております。このように、税務をめぐる環境変化と言うのはその速度を増す為、企業を取り巻く税務リスクも同じように増大して行きます。

海外で活動する多国籍企業にとって、グループ全体で税務情報やノウハウを共有し、統一的なポリシーに従い全世界で統一的な税務対応を可能にする「本社主導型の税務管理体制」を確立することが、コンプライアンス上の最重要課題のひとつとなるのは間違いありません。

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