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税制調査会で審議の的となった『電子経済』
更新日:2018年11月16日
去る10月23日開催された税制調査会の国際課税関係の会議資料の項目の中に、今やトレンドの中心とも言えるトピック(=電子経済の課税上課題への対応)が掲載され、熱の籠った審議が実施されたとの事です。
以下はここで話された内容の一部を抜粋させて頂いたものとなりますのでご紹介させて頂きます。
《内容》
(1) 電子経済の課税上の問題点とその対応
イ 問題点
"国際課税における事業所得に関するこれまでの原則と言うのは、恒久的施設なければ課税せずというスタンスである。しかしながら、BEPSにおける考え方では、価値が創造された場所で課税すべきとされているが為、ここに制度上の不整合が生じるケースが生じている。一例を挙げると、従来の恒久的施設課税で対応できないビジネスモデルとして、映像、楽曲、ソフトウエアといった無形資産の配信等がある。
上記で事例を挙げさせて頂きますと、日本向けの映像配信について、日本国外にサーバーを置くことで日本での課税を回避する例が"現在も存在している"と言うものです。
では、これに対する日本のこれまでの取り組みと言うのは一体どのようなものだったのでしょうか。
《日本での取り組み》
1. 消費税法の改正
平成27年度改正で、国境を越えた電子サービスに対する改正
2. 恒久的施設の定義拡大
平成30年度税制改正で、一定の要件を満たす倉庫についても恒久的施設に含めることとする。
(参考)
「恒久的施設なければ課税せず」の原則は、従来の国際間取引が主にB to Bとして行われていたが、現在は(インターネットの普及により)B to Cによる大量の国際間取引が行われている(例えばアマゾンなど)。このようなことから、日本のこれまでの取り組みは、個別対応的で包括的な解決に向けたものではないとの判断がある。
ハ 国際的な議論の状況
2018年3月16日、OECDが電子化に伴う課税上の課題に関する中間報告書を公表。この報告書の中では、長期的な課題として恒久的施設なければ課税せず等の原則を見直しすること、長期的解決策が合意に至るまでの暫定措置に対するガイダンス等を公表している。また、2020年までに長期的解決策の取りまとめに向けて作業を進めるとのこと。
ニ 欧州委員会(EC)の提案
欧州委員会で議論されている『電子経済』への課税に関するEU共通の解決策として以下の内容の提案が議論されている。以下のいずれかの条件を満たす電子的な活動への課税
1. EU域内での電子サービスによる年間収入が700万ユーロ超
2. EU域内での年間アクセス・ユーザー数が10万人
3. 年間の電子サービスに関する契約締結数が3000件超
この『電子経済』への課税上の課題に対する各国の動き上記が代表的なものとなりますが、ここからは2つの意味が見て取れます。一つ目は、軽課税国等にサーバーをおき、税負担の軽減を図ることであり、二つ目は、複数国間における課税権の配分です。
前者の、軽課税国等へのサーバーの設置に関しては、税務当局としてはタックスヘイブン税制にて対応してきましたが、後者の課税権の配分については、タックスヘイブン税制の対象とならない国間でも生じてきます。ECの提案は、まさに課税権の配分に関するものと考えられます。
いずれにしても、電子サービスに係る国際課税の考え方は2020年以後大幅に変更される可能性があります。もっとも、現行の租税条約は、「恒久的施設なければ課税せず」を原則にしていますので、新たな基準が設けられた場合であっても租税条約の改正がなければ適用されることは無い為、課税当局にしてもこれを実行に至らせると言う道のりにはまだまだ課題が山積していると言うのが実情とも言えます。