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やはり結局、香港は中国に呑み込まれる運命にあるのか?- 2
更新日:2019年03月01日
中国が掲げる「一帯一路」構想の最東端となる地域と言うのがこの「大湾区」。これを構成する都市と言うのは広東省珠江デルタの9都市(広州・深圳・東莞・恵州・仏山・江門・中山・珠海・肇慶)に香港とマカオを含めた広範な領域となることは前回でご案内しました。
このエリアが中国の経済に与える影響と言うのはこの構想の中心である"珠江デルタ"部分だけを切り取ったとしてもGDP比較では実に国内の13%を創出(約9兆人民元)している巨大な経済圏であり、ここに香港・マカオが加わることで更なる飛躍が中央政府から期待されているのは至極当然の成り行きと言っても過言ではないでしょう。
今後この「大湾区」は、国家レベルの協力調整システムによって中央政府からの権限移譲と政策支援を受けることで、資本取引での人民元の越境使用や外為管理改革などを先行実施、各地金融市場の双方向拡大による「金融核心圏」化を目指すほか、域内の基礎インフラ強化、また広東省を中国の科学技術産業の中心に引き上げることを狙いとしています。
さて、こうした中で香港の今後の立ち位置と言うのは一体どうなって行くのでしょうか?
香港は地理的に広東省の一部である為、人口を構成する主要な人種は(当然のことながら)広東系華人が最も多くなります。また海外に新天地を求めてビジネスの土台を作った「華僑」と呼ばれる層は全体の人数の内の半数以上(3,680万人の54%)がこの広東省出身者であると言われてもおり、広東語がこの「華僑」と香港の"共通言語"として認識されています。
こうしたことをベースをとして香港は常に(中国に)返還前も返還後も華南経済圏を代表する都市でありました。事実として1997年の返還後は新しく制度化された「一国二制度」のもとで、今日まで外国及び外国企業にとって中国本土への"ゲートウェイ"であり続けています。
では、この「一帯一路」と「大湾区」構想における香港の使命と言うのは何になるのかと申し上げると、それは昨年来日してこの大湾区構想を大々的に喧伝した現在の香港トップであるキャリー・ラム行政長官の言葉を借りる訳ではありませんが、「スーパーコネクター(Super Connecter」たる役割を担って行くと言うことになるでしょう。
これは世界と中国をこの壮大な計画下で繋いで行く役割と言うことで、それ以外にも中国政府による国家プロジェクトを達成して行く為の「インタープリター(翻訳者)」であり、また「インテグレーター」として国を跨ぐ環境下での事業及び資金のコーディネートを期待されています。
実際、既にこれらの項目の実現に向けて必要なインフラは香港と華南地域(深圳、広州、珠海、マカオ)と言った沿岸地域都市で昨年の秋口の段階で整備されており、いよいよ今年はその稼働を行うことで潜在的なポテンシャルを国内外にアピールするステージへと入りました。
恐らくこれから数年の内に、今までイメージしていた香港と中国都市の融合具合と言うのは刮目して見なくてはならないようになることは間違いありません。
日本企業に置かれましても、この大湾区構想のプロジェクトに参画する際に当たっては、香港の役割や重要性について再認識する必要があるのではないでしょうか。