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中国における「技術指導料」に関する税務上のリスクとは?
更新日:2019年03月29日
中国進出を行う際にマーケットを徹底的に調査してから立上げを行うパターンと、国内取引先などの意向を汲む形で進出決定を行うパターン(所謂、"受注"優先)の二通りが大別してありますが、統計などを取ると恐らく多くのケースは後者が占めることになると言うのが一般的でしょう。
コンサル視点でこうしたことを見た場合は、明らかに失敗の轍を踏むようなリスキーな選択となるのですが、それでも刻一刻と変化する状況への対応次第では成功の確率を高めることが可能かも知れません。
そうした中でどうしても必要なファクター(要因)のひとつと言うのは、親会社からの徹底した支援となります。但しこうしたことのみに囚われてしまうと、「中国」と言う国に潜む本当のリスクに足をすくわれることもありますので細心の注意が必要です。
"備えあれば憂いなし"ではないですが、技術指導を行う際に発生するこの技術指導料に関する税務リスクを質問形式でご案内したいと思います。
【質問】
中国の工場での生産性向上や製品の一定の品質確保の為に、今回、日本(親会社)から何人かの技術者を出張させることとしました。
当社としては中国に関する税務上のリスクについて余り良く理解していないと言うのが現状であり、その為に顧問税理士にも相談を持ち掛けたのですが、(国外は良く分からない)の一点張りで正直、どこに相談を持ち掛けたら良いのか考えあぐねています。
今までのやり方を踏襲すれば単純に日本の親会社宛に技術指導料を支払っているだけなのですが、こうした無策に近いやり方で税務上は問題ないでしょうか?
【回答】
この技術指導料がノウハウなどを含めた生産技術や特許権の使用に関する譲渡などと言った、所謂、無形資産に対する使用料(ロイヤリティー)に該当するものではなく、現地の企業の既存設備機器の性能や効率性の向上を目的として行われる役務提供に対する対価である場合は、税務的な見地から取引価格の妥当性と技術者の派遣態様により、子会社側(中国)&親会社側(日本)で以下に述べるポイントを留意して置く必要があります。
1)中国子会社における技術指導料の損金処理の可否
当該技術指導料は国外関連者へのサービスへの支払いに該当し、国家税務総局公告2017年第6号に定める独立取引原則の要件を満たす範囲で損金処理が認められる
2)日本親会社側に対する源泉地国課税
当該技術指導に係る役務提供が12ヶ月の内に合計6ヶ月を超える形で行われる場合は、PE(恒久的施設認定課税)と解釈され、日本にある親会社に対して中国の企業所得税が課税される。
ここでどうしても失念しがちになってしまう点と言うのは1)と言うよりも2)の部分であり、これを知らないでそのまま放置して置いたりすると、実際に課税アクションが現実となった際に日本親会社側が憤慨したり、また中国当局側とのトラブルに発展する可能性があることをく認識して置く必要があります。
このように「PE」と言う概念は国際税務の専門家間では常識的な知識のひとつではあるのですが、一般的な浸透の具合は現在をもってしてもまだまだ希薄であることは否めず、結果、これを軽んじてしまう企業自身が後で大きな損失に被ってしまうことになってしまうのです。
何れにしても国際間の税務相談は、然るべきエキスパートへのご相談を入念に行うことが将来的損失を抑える最も重要なことであると言えるでしょう。