香港のメリットを挙げろと言われた場合に出て来る項目の一つの中には「税率」と言うものがあります。
例えば香港の場合、株式の運用の結果で利確があってもここに掛かる税金は存在しません(=無税扱い)。こうした市場特性を香港は整えている為、その結果富む者は更に富み、そうで無い者も税金支払いと言う視点では比較的楽に暮らせて行ける恩恵に恵まれることとなります。下記に取り上げさせて頂くケースと言うのは上述のような株の運用と言うものではありませんが、逆に香港に対する投資を"法人"と言う切り口から行った場合にひょっとしたら将来出喰わす可能性のある自己株売却に纏わるものです。
ここでは法人、それもパートナーと出資(例:51%対49%)をしている法人株主が、何らかの事情で相方から(相方保有の)株式を買取を依頼された場合の課税関係の話を説明します。以下は質問・回答形式のスタイルを取り、こうした事由発生の際の考え方についてご案内させて頂いたものですので是非ご参考下さい。
【質問】
弊社は長年香港で仕事を行い、現在では中国の深センにも工場を構えて(独資で100%出資)事業を行なっています。弊社香港法人は現地の合弁パートナーである香港人と一緒に作ったものなのですが、先般、その香港人パートナーから個人的な事情もありその者が保有している49%の株式の買取が出来ないかどうかの打診がありました。
今までの経営努力によって比較的内部留保している資金もあるのでパートナーの希望に添いたいとは考えていますが、ひとつ気になる点はこうした事を行う際の課税関係の事です。つきましては質問としてこうした場合の株式を買い受ける側の立場において、香港での課税関係について教えて下さい。
【回答】
香港法人が自己株式を買い受ける場合、自己株式の取得は純資産の部の変動に関することである為、非課税取引としての取り扱いを受けると言う事になるので課税関係は生じないと考えるのが正しいことになります。その流れの一環として存在する自己株式消却についても上記同様、純資産の部の変動に関係することでもあるので非課税扱いです。
一方、今回のケースような個人株主が保有する株式をその会社自身に対して売却するような場合は有価証券の譲渡になるので課税は発生しません。
また、金銭等の交付を受けた場合等は交付を受けた金銭等の時価からその交付のベースとなった(その企業の)株式に対する部分の金額を超えた部分について"みなし配当"として取り扱われることになります。
何れにせよ、香港と言う地域は受取配当に関する取扱いは非課税と言うことになりますので課税関係に関して頭を悩める必要は"余り多くない"と言っても過言では無いでしょう。
但し、今回の質問から懸念点として上がって来る部分と言うのはむしろこの香港法人が保有している中国法人(香港会社からすると子会社に相当)に関する部分です。株主が変わると言うことはAからBへと所有権が移ることを意味する為、100%子会社として香港法人の下に位置する深セン工場には殊更注意を払わなくてはなりません。
何故なら深セン工場(独資法人)のオーナーである香港親会社の株主がA⇨Bへと変わるのは事実なので、そのトランザクションの結果としてAが受け取る"余剰部分"に関する所得には中国国内で課税が掛かることになってしまうからです。こうした数珠繋ぎとなる課税体系については実際の行動計画を作成する際には必ず検証する必要がある事項と言えるでしょう。