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大国の事情や思惑に"翻弄される"、香港の未来
更新日:2019年07月11日
香港で発生した"政府対民衆"の行方は、一先ず市民感情の沈静化を最優先とする香港政府(中国政府?)が廃案化することで決着がつきました。1ヶ月前後に渡って揉めた"直接対決"は、形としてこのような結論が出ることになった訳ですが、今月(7月)に入り、今度は香港の旧宗主国である英国と、現宗主国である中国が、この香港を巡って互いに非難合戦を繰り返す事態へと発展して来ています。
各種報道によると7月3日、英国外相であるジェレミー・ハント氏が1984年に同国と中国が締結した「中英共同宣言」のポリシーで謳われた香港の「高度な自治」を、1997年返還以後50年間に渡って維持して行くと言う基本姿勢の遵守を中国に望む、と発言したことに対して中国が猛反発をしていると言うものです。
ハント外相はロイターとのインタビューの中で「(中英共同宣言」は)法的拘束力がある文書であり、50年間は有効だ。中国が他国に対して国際的な法的義務の遵守を望んでいるように、我が国(英国)も中国に対してそうすることを望む」と述べました。当然、これを受ける形となる中国も黙っていません。
すかさずこのハント外相のコメントに対して中国外務省の耿爽報道官が、「英国が香港市民の自由を希求すると発言するのは全く恥知らずだ」とし、英国統治下の香港に言論の自由やデモの権利があったのかとハント氏に反論するだけでなく、また「英国、特にハント氏が自国の力量を過大評価し、気まぐれに香港の問題に干渉しないうよう求める」と強調したとのことです。
実際のところ、英国サイドは政界のトップであるメイ英首相もハント外相発言と同日の3日に、"(中国が)香港市民の権利と自由を尊重する必要がある"と発言しており、香港と言う材料をベースとして主権争いに近いやり取りを今や大国同士(中国&英国)が行なっていると言う図式です。
現状では既に香港自体が中国の手に落ちてしまっているのは事実である為、英国のこうした反応に"釘を刺す"形となったこの中国のスタンスは国際政治上では尊重されなければならないものですが、そうであっても中々額面通りには受け止められない側面も、この関係にはありそうです。
あくまで想像の域は出ませんが、少なくともこの両国の動きから2つほど見えて来るものがあります。
先ず、そのひとつとして、こうした中国の手荒な"扱い"の対象となる香港、突き詰めれば香港市民の感情としては、これを契機に「親中」となるとは言い難いと言うこと。事実として社会的に上層部の人間以外の大衆は殆どが"嫌中派"であり、本音部分としては素直に受け入れられるものではないと言うのが現状でしょう。
一説によると、この超大型デモの扇動及び工作は、西側(英米)が中心となって市民の中のキーマンやキーとなる団体等にデモ活動等に関する資金の提供を行っているとすら言われており、いまだに強く英国色を残す香港を"裏から動かす"のは、実はかなり容易なことなのです。
こうしたことに危機感を憶えている中国共産党が思想統制や言論での枠組みの押付けに走っていたのも、そうした事実を裏付けるものです。つまり、現在においても香港は(精神的には)英国下にあり、これを不満に思う中国が"水面下での戦い"を激化させていると言うことなのです。
またふたつ目としては、こうした大国の力関係に影響を与える"ツール"として現在の香港が使われているのは明らかであることです。香港を手離した英国にすれば、香港で何が有ろうとも、実質的なダメージを同国が受ける訳ではなく、むしろ中国に属する国際金融センターの雄である香港の凋落を英国が画策するようなことがあれば、現在の宗主国である中国にとっては対外的な"痛手"となって表出して行くことは否めません。
この戦いの果ては、現時点では見えては参りませんが、大国の思惑に翻弄される形となる香港にとっては心弾むものではないと言うのは事実であると言えるでしょう。