企業は年々増加の一途を辿っています。2014年、1,060社がスタートアップしたと言う記録がありますが、その後、1,558社(2015年)、1,926社(2016年)、2,229社と徐々にその数が増えて行くことになり、5年後となる2018年にはその数は2,625社にまで膨れ上がることになりました。そしてその内訳を見て行くと3分の1以上は香港外からの移民によって起業されているとのことです。
こうしたスタートアップ企業の分野は主にSaaSやIoT、データ分析、バイオ、AI、ロボット、VR/ARと言った情報や通信技術に関連するものが多く、更にこれらを応用して事業化するフィンテック、医療保健、スマートシティやスマートハウス、或いはメディア、教育と言った分野が主流を占めています。
ではこうした産業を後押しする形となる香港政府の関連政策はどのような内容となっているのでしょうか?
政府が推進する環境概況と言うのは「イノベーションテクノロジー産業関連支援政策」と銘打たれて以下に挙げる6つの分野から構成されており、そして推進をされています。
具体的には「環境」、「人材」、「資金」、「施設」、「金融」そして「施策」となるのですが、代表的な骨子と言うのは以下の通りとなっています。
1.環境
・自由且つ利便性の高いビジネス環境
・整備された法治システムと経済制度
・整備された交通ネットワークとインフラ施設
・完備された通信インフラ施設
2.人材
・現地(香港)の大学における研究人材(QS世界大学トップ100に4大学ランクイン)
・国際経済に精通している専門サービス人材の集約
・科学技術人材への香港滞在許可スキーム
・「傑出学者計画」のプロジェクトの設立と運営
・「大湾区院士(大学院生)連盟」の設立と運営
3.資金
・香港内大学向け研究開発支援資金の設置
・大学教育資助委員会向けに予算HKD200億の研究基金を拠出
・「創科創投基金」の導入(香港スタートアップ・イノベーション企業マッチングに対して)
・予算約HKD30億の「研究マッチング補助金スキーム」の設置を現時点では検討中
4.施設
・香港科技園と香港数碼港機能の強化
・香港科技園内に医療科学魏実、AIとロボット技術の2つのイノベーションプラットフォーム建設(約HKD100億の予算)
・落馬洲河套地区に「港深創新及科技園」の建設計画
・将軍澳工場邨の「データセンター」と「先進製造センター」建設
金融
・オープン・ファンド型会社精度の正式導入
・新しい上場制度の実施(例:投資家権益保護の前提のもと、個人所有の新興及びイノベーション企業、無収入或いは無利益のバイオテクノロジー関連の会社の香港上場
政策
・政府データの開示政策
・イノベーション推進向けの新たな政府調達政策の検討と実施
・政府認定を付与した現地科学技術企業に対し、研究開発費の最初の200万HKDに対して300%の損金控除、残額は200%の損金控除
・科学技術の重要性を広く社会に認知させるべく市民へのイノベーション認知に関するプロモーションの向上
上記の枠組みの構築で既に2019年に入った段階では世界でも有数な「スタートアップ拠点」と認識(既にイノベーションエコシステムでは世界トップ25に入っています)されている分野もあり、こうしたことからも香港の真剣度と言うのが伝わって来るかのようです。
こうして新しい領域での取り組みを世間の方々が実感できるのは恐らくまだまだ先のことになるとは思いますが、意外と早くそのようなニュースが一般層に伝わって来る日がやって来るのもそれほど遠くない未来になるかも知れません。乞うご期待です。