1990年代の中頃から約10年の間と言うのは日本企業、特に上場クラスの企業達が挙って香港を足掛かりにしつつ、中国の内陸地域への進出を積極的に行いました。
当時の中国は積極的に外資を誘致する為に①安い労働力、②急速なインフラ整備、③中国政府系、特に進出候補となる地域の鎮(ちん)の優遇措置の提供等々...様々な要因が絡み合い共に成功の美酒を味わうことになった訳ですが、昨今の進出のパターンと言うのは(かつては)時代を牽引していた大企業の進出が一巡した為なのでしょうか、今では個人事業(主)が進出を行うと言う形が顕著なトレンドとなっています。
「個人事業」とは文字通り、個人が単独事業主としてビジネスを行う事業形態のことです。事業主が単独事業を行うのでプラス面としてはそこで上がる利益を全てこの個人が享受出来ることになりますが、反面、マイナス要素としては、そこで起こるリスクも1人で負わなくてはなりません。
また個人事業主はビジネスパートナーに対して責任を負うことはありませんが、事業債務については無限責任を負うことが義務付けられます。
以下に挙げているのは事業形態としてこの個人事業を選択した場合に考えられ得るケースです。
⑴ 初めて企業する場合
⑵ 小規模な事業を検討している場合
⑶ 複雑な手続を回避し、簡潔な事業運営を行いたい場合
⑷ 充分な開業資金があり、銀行等からの融資に代表されるような、外部からの金銭的な援助を必要としない場合
⑸ リスクが小さい事業である場合
メリット:
個人事業の最大のメリットと言うのは設立にしても運営にしてもシンプルなスタイルを取れる点です。以下は具体的な特色となりますのでご覧下さい。
① 設立が容易:事業開始から1ヶ月以内に商業登録署で事業登記を行い、商業登録証の交付を受ければ手続完了です
② 会社の意思決定が迅速かつ簡単:個人事業主=会社の決定権を有すことになるので第三者等や取締役会等の機関を経て決定する必要がありませんのでスピーディー且つイージーに自由な意思決定が可能です
③ 利益の独占:個人事業主は利益分配を行う必要がありません。従って事業から生じた全ての利益を享受することが可能です。
④ 顧客と密接な関係の構築:個人事業主はビジネス上のパートナーシップを持たないことと、事業に関しては無限責任を負う為、より一層積極的な事業展開が可能です。結果、顧客との緊密な関係を築くことが可能となります。
デメリット:
① 無限責任:個人事業主は事業債務について個人で全ての責任を負うことになる為、場合によっては会社の債務について個人財産を充てるなりして弁済を行わなくてはなりません。
② 運転資金の調達&融資枠の確保:個人事業というものは金融機関から見るととても脆弱な存在である為、融資枠を引き出すことは非常に困難です。特に最初の立ち上げ時等にこれを引き出すのは至難の業で、結果として自己資金で運営を行なって行くのが現実的です。また出資者を求めるとなると、構造上、個人事業の枠組みでは無くなるのでこの面からも非常に厳しい側面が内在しています。
③ 仕事量の負担:個人事業としてスタートし、軌道に乗って来るとなると、その仕事量を納期等の時間枠に合わせて行くことが困難になる場合があります。嬉しい悲鳴ではありますが、個人が出来る範囲には自ずと限界がある為、何処かの段階で個人事業から本格的な法人設立を行うことも視野に入れて行く必要が出て来ます。