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香港の"格下げ"と中国が抱えている"ジレンマ"の按配が解決への鍵?
更新日:2019年10月15日
既に一部の方々は既成事実のように捉えられていた向きもありましたが、先般、大手各付け会社のひとつであるフィッチ・レーティングスが香港の各付けを一段階下げ、AA(ダブルエー)にするとの発表を行いました。
その理由は明らかで、フィッチ曰く「香港の統治システムと法の支配の質と有効性に対する国際的な見方に長期に渡るダメージを与え、香港のビジネス環境の安定性とダイナミズムに疑義を呈した」との内容・指摘であり、これは即ち今後の香港の将来に"暗い影"を残す可能性があることを示唆しています。
しかしながら、一方では他の各付け機関(例:S&Pグローバル・レーティングス)等ではまだ現段階では香港の評価に"メスを入れる"ことを行っておらず、依然として「安定」と言うポジションの見方を行なっていることもあり、専門機関の中でも現在の香港の評価が2つに分かれていると言うのが現状です。
実際のところ、世界に発信されるこの「香港のデモ」と言うものは、あたかも香港全土が"世紀末的な荒れ具合い"に見られているように報道されている訳ですが、実のところは(例えば香港に在住している住民から見ると)まだ依然として局所的な発生である為、懸念・不安となる材料のひとつには違いないとは言え、当地と外野との状況把握の度合にはかなりの乖離が見られています。
もっとハッキリ言うと、現地側では香港の将来性に絶望してしまうほどの展開だとは捉えていないと言う理解がまだ多数なのです。
しかしながら、国慶節には大規模なデモ計画があり、学生が被弾するなど状況は深刻度を増しつつあるのは事実であり、一大イベントが終了した中国共産党が、いよいよその"最終判断"を一体どのタイミングで行うのか?と言うものも注視して行かなくてはならない要素はあります。
従ってこれらに応じて各付け機関の評価と言うものもかなり大袈裟に上下する可能性が今後あるかも知れないと言う見方は否定出来ず、香港の将来はまだ何も定まっていないと言うのがマーケットが出す現時点での正しい回答と言えるでしょう。
ちなみにHong Kong manufacturing sentimentsのデータ上での数値(Index Points)ではやはり下降傾向が顕著であり、その観点から見て行くと、事態の展開がより混乱度を高めることになると更にその数値が下がる→資本が香港から引き揚げて行く、と言う論表になる可能性は含んでいます。
香港自体が資源等を持って外国に対して取引を行うと言う特性を持てない地域であることを前提に考えると、香港の特性である産業(金融や貿易)で自らの地盤を継続的に固めて行くことが難しくなると言うのは、まさに生命線を脅かす展開にしからならない為、現在の状況のまま更に時間を引っ張って行くことは得策とは言えないものです。
他方、取り締まる側の中国にとっても実はそれほど単純なことではありません。
結果的に"軍事侵攻"と言った武力行為で香港そのものを潰してしまうことになった場合は、自由社会の代表であるアメリカや香港と深い繋がりのある日本、そして欧州各国からの非難と失望を真正面から受けることを意味しますし、中国の経済的な繁栄を永く中国国内から支えていた幾多の外国資本系中国企業の事業継続や意思決定等に重大な負の影響を与える遠因となる可能性もあり、そうなると今迄築き上げて来たGDP世界第2位の国家の威信⇒"面目丸潰れ"と外資撤退の契機・理由を与えることになってしまいます。
妥協点を見出す話合いの機会すら現在までは定まっていないこともあり、事態が次第に厭世的になることは避けられないように見える両者の関係...。こうした格付け機関の"ダウングレード"が香港市民や中国当局に自覚を促す要因となれば良いですが、破滅的な結末を望むものはいないと言うことをどちらが具体案に落とし込み、この拗れ切った問題を果たしてどの様な策によって解決するのかを世界は見届けて行く必要があります。