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圧政下の中で"炙り出る"形となった香港市民の「アイデンティティー」
更新日:2019年10月16日
(2014年に発生した「雨傘運動」の時もそうであった...)と邂逅する方々は日本でも意外に多いかも知れません。特にその当時、香港に住み、或いは香港を訪れたことがある方々であればきっとその"エネルギー"を随所に感じたのではないでしょうか?
我々が思う、「香港人」のイメージと言うのは、先ず強か(したたか)な商売人であり、また相手次第で態度を変化させるご都合主義な面を持って立ち回る人間と言うのが一般的ではありますが、彼等が強い者、それも自分達にとって宗主国であり、且つ経済の拠り所である中国に対してここまで真っ向から立ち向かう面を持ち合わせているとは当局側の人間はもとより、香港人自身達にとっても想像だにしなかった出来事に違いありません。
「逃亡犯条例」に端を発した今回のデモ、このコラムでは様々な側面からこの一大騒動を論じて来ておりますが、今回、香港政府が発令した「覆面禁止法」についても香港の民衆は心折れる所か、むしろ一層、自国民(ここでは香港人)の"アイデンティティー"死守の為の抵抗を示し続けています。
それこそ、警察隊に催涙弾をぶっ放されても、警棒で骨をも折れんとばかり殴打されても、また発砲を胸に受けて瀕死の状態に追い込まれてしまった14歳の学生がいても、ヘコたれずに対峙を継続しているのです。
世間では香港政府のトップである行政長官のキャリー・ラム氏の"迷い"がこの混乱を大規模且つ長期化することを助長したと捉える見方が多く有りますが、そもそもこの政府自体が設立段階から中国政府にベッタリ、所謂"レームダック"(lame duck)の状態であり、習近平主席の意向でのみ機能するだけの存在に過ぎなかったことは誰しも知っていたのですから、上記の見方と言うのは正しいと言えるものではありません。
むしろ、この段階に至っても自分達の政府(香港特別行政区政府)は市民と向き合わずにひたすら北京からの指示を待つ姿を見せ続けているのですからその姿にはさぞ幻滅を感じ取っていることでしょう。
今回、非常に深刻なことと言うのは注目の集まった「覆面禁止法」ではなく、むしろその前の段階、10月5日に発動となった「緊急状況規則条例」です。この条例制定の意味と言うのはあらゆる市民からのデモ関連の動きに対して行う対抗措置等が、今後、議会承認を得ずして全て行政長官の一存で決定されてしまうと言うことです。
言わば、超法規的な権限付与の措置であり、今後は極端な話、(「覆面禁止法」だけでなく)市民の夜間の外出禁止や国外への渡航禁止、或いは教育制度の抜本的な変更等も、行政長官がひとたび"緊急状況である"と判断するだけで合法として導入され、自由社会である筈の香港で雁字搦めの状況へと押入れられて行く事です。
混迷を深める形となってしまった香港情勢...。この年が開けた時、果たして誰がこの状況を想像出来たことでしょうか?また、迫り来るやも知れない"香港の死"を前にして、座して死すより戦うことを選んだ彼等香港人達の中にある"本当のアイデンティティー"を起こしてしまったことが、中国・習近平主席が香港を"見誤った"とされる最大のミステイクであったことは間違いありません。