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超学歴社会=香港とその構造改革
更新日:2019年11月11日
どこの国でも子供の教育には多大な関心が払われます。これは日本でも香港でも同様の価値観であり、その為親たちはより良い学習環境の確保の為に奔走し、時には桁が違うような学費を捻出するべく必死になって働きます。
香港と言う地域はそもそもイギリスの植民地であったと言う歴史を持っている為、長年に渡って同国の教育制度(小学校6年、中学校5年、予科制2年、大学3年)を採用しておりました。この制度に変更が施されたのは今から10年前の2009年であり、それ以後は日本と同じ6−3−3−4制と言う形にシフトしたと言う流れを辿っています。
香港の教育システムは世界でも非常に優れていると評判ではありますが、それは我が国日本とどのような違いがあるのでしょうか?先ず大きく異なる点と言うのは学年年度の始まりが(日本のように4月ではなく)9月からになると言うことがあります。
年を区分する学期そのものは日本と同様に3学期制になっては居ますがスタート月が変わる為に香港の学校から日本の学校(或いはその逆)へ転校するような場合はタイミング次第で学年そのものが違ってしまう可能性がありますので注意しなくてはなりません。
次に香港の公立学校と言うのは日本の公立学校のように統一されたカリキュラムを施行していない部分があります。つまり、入る学校によってそれぞれの内容がかなり違って来る点があることを念頭としなくてはならず、日本から転校するようなケースですとこうした部分に戸惑いを持たれる方々も多いのではないでしょうか?
では、この違いが何故生まれるのかと説明しますと、(日本の場合)公立学校の権限は政府が握っているのに対し、香港の場合は学校自身が主体的に権限を有していることが原因で、これによって教育カリキュラム自体が大幅に異なるところが生まれてしまうと言うことなのです。
また日本では公立の小学校・中学校は基本的に家族が住んでいる場所によって予め学区が決められていますが、香港の場合は(上述の通り)学校毎に方針が違ったりする為、子供は小学校の段階から自分が行きたい(或いは親が子供に行かせたい)学校の明確な選択を行っていかなくてはならないと言う訳です。
世界の教育界では有名なことですが、香港は「超学歴社会」と言われるほどシビアな教育を行う地域として認識されています。これはこの社会で生活する香港人にとって受け入れなくてはならない「事実」のひとつと言え、故に小学校選びの段階からエリート創出の為の"流れ"が厳然と作られている為、ここでの学力構築次第でその後(例:中学校→高校→大学)が決まってしまうと言われる程強力なのです。
学習言語についても現在は3言語(広東語、中国語、英語)体制が敷かれており子供の学力整備の為のプログラムには一切の妥協がありません。とは言え、香港では(以前の英国色が)固定観念的に人々の間に残っているのは事実であり、その為、英語で授業を行う中学校教育を提供する学校については未だ世間の認識として「難関校」として位置付けられていたりします。
この他香港の"超学歴社会"振りを表す尺度は幾つも存在しています。例えば2015年の学習到達度調査等ではまたしても優秀な結果を収めるに至りました。その調査示した順位とは、読解力が世界2位、科学的リテラシーが4位、そして数学的リテラシーが2位と言うものであり、日本が8位、2位、5位であったことを考えると如何にその程度の高さが凄いものなのかが理解出来るのではないでしょうか。
しかしながら、これ程の"実績"を残せる教育と言うのは同時にそれに"取り組まされている"子供達にとっては非常に過度なプレッシャーであるのは間違いありません。その実、"学力戦争"において全員が勝利者になることはあり得ないものであり、この一遍的な価値観の中にいる子供達は精神のバランスを崩してしまうようなケースも多々有ったりします。結果、ドラッグなどに逃げ道を見出すなり、飛び降り自殺など社会問題も日本同様に深刻化しているのも事実です。
今、教育のスタンスが改めて問われる時代へと社会が気づき始めている中、上記のような"学力マシーン型"教育にも変化の"兆し"が顕在化し始めているのは子供達にとって一種の福音と言えますが、頭の柔らかいが社会的には受け身一辺倒とならざるを得ない彼等子供達ではなく、その彼等の彼等達の親=大人達の頭を変えることが今後の最大の論点となるのは間違いありません。