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『中国優先』のスタンス?外資大手企業、それぞれの対応

更新日:2019年12月09日

それにしても、香港のデモがここまで長期化すると誰が予想したでしょうか?大規模な抗議運動が残したダメージは、その都度局地的であるとは言え、やはり香港の経済活動に確かなボディーブローを与えているようです。

その為なのでしょうか、この流れの中においては中小企業の行方は元より、否が応でも大手企業の対応と言うものに業界の注目が集まってしまうのは致し方ありません。


今から遡ること約3ヶ月前、会計業界で"Big 4"と呼ばれる代表的な会計事務所であるKPMGとPwCが、恒常化しつつある香港デモに対するスタンスを表明しました。その内容の中心的な論点とは、(従業員に対して)デモを拡散・扇動するような行動の抑制、です。

例えばそれは公の場での発言であったり、或いはソーシャルメディア等を利用して個人的意見の発信であったりする訳ですが、こうした点を見て行くと香港内では"言論の統制"と言うのが一定の企業の間には既に出来つつあるのだと言う部分が垣間見えます。


然しながら、企業側から見るとこれはある意味に於いてやむにやまれぬ事情があるのも事実です。


そもそもこのような"動き"が決定的になった理由のひとつと言うのは、香港を象徴するような航空会社であるキャセイパシフィック航空の従業員が香港政府への抗議の為にデモ活動に参加したことに端を発しているのであり(後日、これが中国側の逆鱗に触れることとなってしまい、同社会長であったジョン・スローサー氏はその責を取って辞任)、中国国内で巨大な利益を稼いでいる大手企業にとっては(本意としては別としても)配下の従業員の勝手な行為と会社の方針を中国側に同一視されてしまっては堪らないと捉えているからです。


実際、こうした政治的なケースをビジネスインパクトのひとつとして分析するコンサルティング会社の見方も上記大手企業のスタンスと同調路線を敷いており、(大手企業達は)中国のやり方に従うと言う点において"事の本質を掴んでいる"、と評価しています。


但し、一方では同じ大手の中でも英国系金融の雄であるHSBCホールディングスはまだ明確なスタンスを表明していない企業のひとつです。


何故なら同行は(現時点においても)行員の行動を抑え込むようなアクションを行内で取っておらず、むしろ法律に違反しない限りにおいては配下の行員がこうしたデモ活動に参加することを"認めている"と言う記事が同時期の英紙フィナンシャルタイムズに掲載されたりしました。

後日、HSBC自体も行員の政治観や社会問題に関する個人的意見については"常に尊重している"とコメントしているところから見ても、今後もこの問題に関する同行の立ち位置は変更が出て来る可能性は少なそうです。


何れにしても、各社の取るスタンスには一定の傾向があるのは事実ですが、現時点では『商売優先型』を取る会計事務所や航空会社のようなポジションがマジョリティー(大半)であり、『人権優先』を問う、勇気を持った(?)立場を主張した金融機関(HSBC)は少数派になるのは否めません。


しかしながら、統計結果に中国が囚われ過ぎ、その結果、傍若無人にやり過ぎてしまうようになると、こうした国際的企業の方向性にも大きな変換が訪れても不思議ではありません。仮にこうしたことが起こる場合は海外資金調達手段として香港に多大に傾倒している自国企業(中国企業)そのものにも一定の"返り血"=傷を与えてしまう可能性は十分に残されています。

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