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『運命共同体』的な立ち位置へと変化した、香港と台湾の関係
更新日:2020年01月23日
今回の台湾総統選を端的に評価すると、昨年末の12月に行われた世論調査上でも既に蔡英文氏が他の候補者に対して大きなリードを広げていたこともあった為、選挙そのものはまさに予想通りの展開と結果となった訳ですが、実はこの状況自体はそれより遡ること更に1年である2018年11月の時点では(恐らく)誰も"予想出来ないもの"でありました。
何故ならその時点で行われた台湾での統一地方選で蔡英文氏の民進党は国民党に完敗を喫すると言う状況であったからなのです。即ちこれは、台湾における主要都市のトップの多くが他の政党側(国民党等)に移ってしまったと言うことを意味しており、その為当時は今回(2020年)の総裁選で政権交代、つまり民進党から国民党へと移行するのが現実的と見る風潮が殆どでした。
しかしながら昨年の6月以降、この"流れ"が一転して行くことになります。何故なら国民党の候補者である韓国瑜氏は親中派であり、蔡英文氏が(対中と言う視点では)抵抗を試みるポリシーを実践して来た政治家であったと言うことを一般台湾人は理解しており、彼等は「逃亡犯条例」改正の是非を巡って勃発した抗議デモへの中国の圧力を、あたかも彼等自身の行く末を投影するかのように見ていたからなのです。
事実として中国をベースにこの2つ(香港と台湾)を考えて見ると、根幹部分で"共通点"が存在します。それは、この2つの領土は清朝政府(当時の中国政府)が英国や日本との戦いで敗れたが為"割譲させられてしまった"地域だったからなのです。
この"屈辱的な扱い"を受けた中国からして見ると、(世界的に力を付けた現在であるならば)その力を使うことでこれらの"領土奪還"を成し遂げ得たいと考えるのは心情的には自然なことであり、この感覚は江沢民→胡錦濤→習近平と続いている指導者達の間でも脈々と受け継がれているレガシー(遺産)のひとつなのです。
1997年の香港返還は中国が描いていた上記の悲願の成就のひとつと言え、その同一線上の先に台湾が位置していると言うのは明らかです。当然、香港を題材として実験的に採用することになった「一国二制度」も将来的なレンジにおいては台湾を見据えた上でのものであると言っても間違いでは無いでしょう。
他方、台湾側にとってはそうした中国の勝手な「プラン」に対して迎合することはあり得ず、むしろ香港情勢(自由や法治が揺るがされ、また民主の実現も"風前の灯"と化すような状況)を通して一層の警戒感や反発心を募らせているのが実情です。
事実として台湾国内では今回の選挙で民衆の間で「亡国感」と言う言葉が流行したことからも分かるように、こうした中国からの"脅威"に対して尋常では無い危機感を感じており、その反動ゆえなのでしょうか、"今日の香港は明日の台湾"と言う言葉すら様々な層の方々が口にしました。これこそ、その心情(=本音)がハッキリと表されているのではないでしょうか。
総裁選の行われる週、香港からは多くの人々が台湾へ移動し戦況を見守ると言う報道が有りました。彼等香港人達の想いと言うのは、現在、自分達が手に出来ない本当の"自由"と言うものを、また実行することを許されない"普通選挙"と言うものを、確りと見届け記憶に刻印することで明日の力へと転嫁させて行くものであることは想像に難く有りません。
大勝利に沸く台湾を見て、ある香港人はその感激をこう表現したと言います。
"今日の台湾は明日の香港"だ、と。
台湾と香港が「運命共同体」となったと形容出来る瞬間だったのかも知れません。