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『コロナウィルス対策』を次々と打ち出す香港
更新日:2020年02月25日
コロナウィルスの猛威は今や世界中に拡散し、各国は現在その対策に追われているような状況ですが、ここ香港でも旧正月を前後として本格化したこの伝染病に対する各種の対策を官民で本格的に実施しています。
官の部分で言うと、情報公開のレベルについてはどこかの国に爪の垢を煎じて飲ませて上げたいくらい詳細なものであり、これこそが国が実施するレベルのものであって然るべきでではないか?と評価する向きも出ているくらいです。思われます。
先ず、香港政府の動きですが、初動としては必ずしも理想的なものではありませんでした。デモよろしく、こでも一旦は中国政府への配慮を優先しましたが、詳細を把握後は、迅速に必要措置を次々に打ち出すことでイメージの払しょくを図っており、現在はある程度の信認を市民から得ることに成功しているようです。
時系列的に記述して行くと、香港で市民に最初の新型ウィルスを原因とした肺炎患者が確認されたのは1月23日のことでした。これは中国政府が公式に新型ウィルスの存在を認めた1月20日から3日後のことであり、同日湖北省武漢市そのものは"完全閉鎖"と言う状況へと追いやられることになります。
それからはと言うもの、香港でも武漢市の状況を後追いするかのように連日、数人の感染ケースが確認・報告され、2月9日に記録した二桁(10人)をピークとして、現時点(2月25日)まで81名の患者数を記録することになっています。
立地的なことを考慮に入れた場合、香港は中国本土側である広東省深セン市と陸続きであり、また通常は年間ベースで約4,000万人の中国人が訪れる先と言う実績がある為、こうしたパンデミックに対するその処方が注目されていました。
こうしたこともあり、香港政府は中国側との"接点"である15ヶ所の陸・海・空の入境ポイントに着目し、この部分を先ず制限(15ヶ所⇒4ヶ所:香港国際空港、深セン(蛇口)及び珠海と海を跨ぐ2本の自動車道路橋のみ)を掛け、2月8日以降は本土から帰って来た一部の香港人や外国人等に対して入境後の拘束期間(14日間の自宅待機或いは宿泊先での待機観察処置)を課す制度を導入することで徹底的に中国本土からの感染流入をブロックする枠組みを導入しました。
次に"核"となるのが香港内での感染抑制です。これはネット媒体を利用し市民の携帯アプリに正確な感染状況の逐次アップデートを実施するだけでなく、他のメディア媒体である新聞各社と協力することで、新聞社が作成している「感染地図」を連日掲載するなど正確な情報の提供を行っています。
ここで提供される情報の質も相当の水準で洗練されたものとなっており、具体的な地区名どころか住宅ならマンション名、職場ならオフィスビル名が明記され、また以前のSARSのように集団感染のリスクがあるような場合は具体的な階数や部屋番号まで出ていると言う徹底さです。
民間企業への働き掛けも早々にアナウンスされています。旧正月休暇と被ることもあった為、そのまま自宅待機を奨励する企業・団体が多く、現時点でもその状態を保っている会社等は少なくありません。
公務員に至っては3月1日まで在宅勤務、幼稚園や小中学校は4月20日まで全学休校が敢行されています。また、商業施設等でも自主的に店を閉めていたり(例えば香港ディズニーは無期限閉園)、MTR(地下鉄)やバス等の交通機関や図書館等もマスク無しだと乗車拒否、入館拒否の憂き目にあいます。更にオフィスビルに入る際も入館時に体温測定の常時実施が義務付けられると言う、まるで戒厳令下のような様相です。
こうした香港の風景及び意識の置きどころを考えると、我が国のそれは誠に"呑気な"水準であり、こうした懲りないスタンスと言うのが、現在までの感染者数拡大にストップが掛けられない一因と捉えられているのは不思議なことではありません。
香港にはSARS体験が生々しく残っているゆえ、最善を尽くしているのが伝わって来る今日この頃、感染者数が沈静化しつつあるのはこうした努力の結果と言えるでしょう。