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習近平の"失政"と政治家としての"限界"を露呈する代表的事例となった「香港問題」
更新日:2020年02月07日
中国の上層部にとってこの「香港問題」と言うのは、少なくとも2019年の6月の段階ではここまで中国の根底を揺るがす大問題になるとは想像もしていなかったことでしょう。何度も報道はされていますのでその拡大のプロセスは割愛しますが、香港人カップルの関係のもつれを発端とする台湾での殺人事件を契機として発生したこの問題は香港政府(及び中国政府)の間違った対処法によって混迷の度合いを一層深めて行くことになりました。
現在は「新型肺炎」と認定されているコロナウィルス騒ぎがピークを迎えていることもあってかこの香港問題はやや鎮静化(?)の様相を見せてはいますが、だからと言って根本の問題が解決した訳では無い為2020年の間でもまた何処かの段階で"再燃"する可能性を孕(はら)んでいると言えます。
そもそも、中国共産党=習近平政権が香港に望んでいたことと言うのは香港の法律である基本法(The Basic Law)の23条に基づく国家安全条例の制定でした。習近平の前の政権、即ち胡錦濤の時代に挫折をしたこの条例の制定を自身の代で成し遂げたとなれば、香港をその手で支配したと言う大きな成果につながるのであり、まさに数ある習近平の悲願のひとつの成就となる筈だったのです。
ところがこの「条例」こそ香港の司法の独立性を完全に打ち砕き、香港在住の民主活動家や反体制派の人間を香港警察が(中国の代わりに)"政治犯"として逮捕することが出来る根拠となり兼ねないものであった為、これを知覚した香港市民が(当地始まって以来の強度となる)大型デモで抵抗を示す形となりました。
つまり、習近平のこうした"個人的野心"、或いは"早計"が香港を怒らせてしまったことでそれを見た世界が中国への信頼を与えることに躊躇し始め、更には(これらの連鎖反応として一番タチの悪い)本国内の不満分子達に香港と同様の抵抗を行う余地(隙)を見出せさせてしまうと言う最悪の展開となってしまいました。
従って、こうした一連の出来事を考えると現在の習近平が恐れるのは米中貿易戦争と言うよりも、(むしろ)"国内での体制維持である"と言っても間違いでは無いと言う見方も出て来ます。
勿論、依然として経済に打撃を与え続ける上記の貿易戦争の影響はありますが、これに加えて香港での失策により習氏自身の中国共産党内での支持基盤に亀裂が入り、また習氏を裁く共産党そのものも中国国内での支持を失なう大きなリスクに晒されています。
つまりこれらの事を含むと2020年以降の中国&香港の展開と言うのは、上記のような国内状況の変化が習近平氏と共産党を窮地に追い込む可能性を多分に含んでおり、仮に彼等が打ち出す「次の手」なるものが失敗に終わるとなった場合は一層の混乱が表出する形となるでしょう。
それでなくても中国全土では 例年、年間約20〜30万件と言われる暴動が発生しているのですから共産党一党による"独裁"と言う体制を揺るがすような決定的なものが発生しないとは言い切れません。
かつて中国に属していた時代の香港(人)と、英国統治後の香港(人)とでは、国や個人としての在り方や、それを構成する考え方において、両者の間には余りにも大きな相違点が発生してしまいました。
共産党内において生き馬の目を抜く出世レースを駆け上がった習近平の運命と夢は、「香港」と言う中国で最小の面積しかない地域の前に今や"砂上の楼閣"と化し、何ら効果的な手段が打てずに8ヶ月が経過しようとしています。
政治家としての「限界」を噛み締めているのが今の本当の彼の思いと言ったら、これは果たして言い過ぎとなるものでしょうか...?