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海外で「共同口座」を持つ際に注意しなくてはならない税務上の課題について-1
更新日:2020年03月13日
「共同口座」と言うのは文字通り、2人でひとつの口座を所有することであり、入出金なども口座契約者の意のままになる便利なものです。この「共同口座」では大方のパターンとしてその原資の多くは稼ぎ手である一方からのものに偏る傾向が顕著で、もう一方の口座名義人はと言うのは、その(稼得された)原資を生活費等などを"目的"として引き出すことが通常であると言えます。
では、この「共同口座」を所有する者たち(所謂"共同口座名義人")の中でも最も典型的な"組合せ"を模索しようとした場合、我々は一体どのような組合せをイメージするものなのでしょうか?この"共同口座名義人"として真っ先に人々の脳裏に上がるユニットと言うのは(恐らく殆どの人が)「夫婦」を挙げることでしょう。
彼等の多くはこの「共同口座」の使用について(日常において)何ら大きな問題や危機意識を抱えていませんが、一旦夫婦間のトラブルが発生したり、家族として片方を失うと言うような非常事態に陥った際、如何に有事に対する備えが不足していたのかを知ることになり、情報集めに奔走する憂き目を味わいます。
中でもこうした「共同口座」を香港のような海外で作る場合においての課税廻りについてはもともとこの分野の専門家がマーケットで少ないこともある為、基本的な税務スタンスの理解を口座名義人その人が(専門家を探し当てる作業をしつつも)自分なりに理解を試みて置こうとする姿勢は必須です。
ではその理解のために具体的にはどのようなことを押さえて置く必要があるのでしょう?
日本ではこの「共同口座」などの、所謂、"夫婦間における財産の帰属"について民法第762条1項で規定されています。その文言は「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方で単独で有する財産のこと)とする。」とあることからも分かるように、原則論として"夫婦間の財産"と言うものは存在せず、あくまでも(結婚後も)自分の財産は自分に帰属・支配するという考え方が採られています。
一方、香港のような金融自由都市では、夫婦の預金口座を「共同口座」にしようがしまいが、相続及び贈与の概念が基本的に存在しないこともあり、他方が他界したことによる課税が生存している一方に全く発生しないと言うメリット面が有ります。
しかしながら、日本人で香港在住時などにこうした「共同口座」を所有するに至り、日本に帰国する(した)と言う思惑(や事実)を持っているような方々の場合は、香港では問題視されなくとも日本の課税に対する対策を常に念頭に置いておかなくてはならないでしょう。先程の日本国民法の解釈にもあるように、"課税"に関する考え方が両国では全く違ってしまっている為、香港の常識が日本で通用すると言う訳ではありませんので尚更です。
次稿では、よりテクニカルな視点でこの「共同口座」に関する解釈をこ紹介致します。