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『SARSの教訓』が今も生きている香港
更新日:2020年05月08日
香港は人口僅か700万人の都市であり、国際金融センターである面を除けば決して経済規模が大きい地域ではありません。この地域は英国領から中国への返還後、自治権を基本法で与えられ軍事以外はこの地域で作った政府で統治が出来るテリトリーとされています。
今回の新型コロナウィルス対策においては、現在までの「数値」でその対処法を評価すると香港はどうやらSARSで体験して学んだことをこの700万人の市民と共に上手に取り入れることに成功したようです。
実績として挙げると香港で「罹患ケース」として取り上げられた数と言うのは総計1,045名(2020年5月7日時点)であり、その数自体は総人口比率からすると現在の日本のそれと比較しても余り大差はありません。
然しながら、この中で特筆するべき点と言うのはこの1,000名超もの感染ケースが発覚したのにも関わらず、この分母に置ける死亡者数と言うのが実は徹底的に低い水準(=4名)に止まっていると言うことなのです。
この数値が如何に"桁外れな実績"なのかと言うことは、例えば日本のケースなどに当て嵌めるとより一層明確に見えて来ます。日本は(香港に対して)"人口"と言う比較軸を使用した場合は約17倍の規模になり、単純計算で「香港での新型コロナウィルス死亡者数4名」と言うのを日本の分母をベースに考えると実に「68名」にしか到達しない事になります(実際の日本の数値はその約10倍の556名)。
しかも当地での4月中旬からの新規感染者数と言うのがまさに驚異的であり、その数は1日あたりのものが何と16日間連続でゼロだったと言う実績を達成しました。
こうした目覚ましい成功事例を作るに至った香港ですが、では、彼らが取った手法というのは一体どのようなものだったのでしょうか?以下が具体的な事例となります。
・香港は欧米諸国の行うロックダウン未導入。但し一部(ゲームセンター、スポーツジム、映画館、カラオケなど)に厳しい制限を設定。
・公衆の場所では5名以上集まることを禁止(現在は9名以上禁止と言う形で規制緩和)。
・飲食業の中ではバーとパブは強制閉鎖。但し、レストランについては席使用を"平常時の50%まで"と規制。更にテーブル間は最低1.5メートルの間隔を空け、1テーブル当たりの最大人数は4名までとすることを義務付(尚、これらに違反した場合は最高5万香港ドルの罰金及び禁固刑)。
・また空港での「水際対策」として入境者は空港近くに設置された検疫所で唾液収集の義務付け。その後、自宅、ホテル、政府が用意した施設で14日間の強制検疫を受ける。
・更に政府からQRコード付のリストバンドが渡され、検疫用アプリをダウンロードしQRコードと同期が義務付け(且つGPSを常時オン→外出が即、当局に通知)。
・唾液の検査結果は3日以内に判明(陽性→政府が入院先手配)。
こうした内容項目を矢継ぎ早に導入し、1ヶ月以上のコントロール期間を徹底したからこそ香港が現在の"別世界"を手元に手繰り寄せることが出来たことを考えると、今の日本にとっては彼等の手法の数々が状況改善の為の有用な参考事例として活用出来る余地は十分に残されています。
また、ロックダウンを行わずしてここまでの結果を作れたと言う事実の裏にはやはりSARSの生々しい体験と言うものが、香港市民や政府の間に確りと『教訓』として残っていたと言うのも強ち間違いでは無いことなのかも知れません。