以前もこのBlogでご案内させて頂いたことのあるマカオですが、この地域は香港から遅れること約1年半後の1999年12月、中国へと返還される経緯を辿っています。
制度としては英国と中国が香港を巡って手配したような「一国二制度」と言う条件で当時マカオの宗主国であったポルトガルと新しくマカオを傘下にする中国との間で締結がされる形となりましたが、香港の反乱と違い、この地域は極めて友好な関係を中国との間に作っていると言っても言い過ぎではないでしょう。
さて、そのマカオですがこの4月、「財政年度施政報告」と言われる報告書を世に発表することになりました。その書中において、マカオ自身が今後の発展を示唆する(?)キーワードが鏤められており、その決意のほどが伝わって来るものとなっています。
具体的にどのようなキーワードなのかと申しますと、中国政府の肝入りと形容されたプロジェクトのひとつである"横琴新区"に関わるものです。
この「横琴新区」と言う地区は、地理的には丁度マカオの隣りに位置する珠海市の中に設立された新区であり、これはかなり前の段階から積極的な投資が中国政府等を中心として行われて来ました。特区である権利も与えられている為、税率も中国国内のような高い税率(例:法人税率25%)ではなく、逆に香港の税率すら凌駕する15%(香港は16.5%)とされている所が特徴です。
香港的な視点でこの横琴新区を眺めた場合、経験値とロケーションから(恐るるに足らず)と泰然として居ますが、これにマカオなどが積極的に絡むとなると実は内状としては(オタオタして居られない)と言う側面があるとも一部では囁かれています。
マカオが描く将来の"自画像"というのは、"マカオ"と言う名を冠した形で横琴新区の金融機能を合体させ、『マカオ国際金融センター』を構築すると言うものと言って良いでしょう。これは現実味が充分あるプロジェクトであり現実的にその為の準備が今、着々と進行していると言えます。
その一例を挙げるとこの"ドッキング計画"を後押しするかのような動きと言うものが今年の3月中旬にございました。その内容は中国政府がマカオに対して自地域の法律を横琴イミグレに適用することを認めたと言うことです。
勿論、こうした"一体化"の推進と言うのはマカオが主体となって舵取りをしている訳ではありません。その推進の裏側、即ちその「動機」には中国側の明確な香港潰し→香港無力化があり、(香港のデモ運動収束の目処が立たないジレンマから)結果的にそのスキーム作りのスピードに拍車が掛かる形になってしまったと言っても良いでしょう。
更にこれを進める大義名分は既に中国側が謳っている『ビッグベイエリア構想』で十分語られている為、正当化出来る素地の上に乗っかることが出来た点も被さります。
果たしてマカオは「大英帝国」が作った国際金融センター香港を凌駕出来るか?この命題に答えが出る日こそ華南地区の"覇者"が決定すると言っても良く、かつて香港にとってはただの"伏兵"でしか無かったマカオの存在が、これから数年の内に"物議を醸し出す"相手とまで成長して来る可能性が出て参りました。