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昨年のデモが与えた試練を克服出来るか?香港の命題とは?
更新日:2020年05月06日
香港と言う地域にとって、『国際金融センター』としてのポジションはとても大切な価値観のひとつです。それはこの地域が、僅か700万人程度の規模でありながらして、世界金融の檜舞台で重要視をされる為のひとつの"座標軸"であったからです。
今回、英国のシンクタンクZ/Yenと深セン市(Shenzhen)の中国総合開発研究所が3月26日に発表した「世界金融センター指数(Global Financial Centres Index)」で、香港は従来の世界3大国際金融センター(ニューヨーク、ロンドン、香港)から滑り落ち、一気に6位にまで転落すると言う憂き目を味わう事になりました。
これは言うまでも無く、昨年から続くデモ活動の影響と認識されており、故に香港特別行政区のスポークスマンは「香港の金融システム自体は依然として優勢だ」と強気の発言を行なったと言われています。
この、「世界金融センター指数」と言うのは、文字通り各金融センターの国際的競争力を示す指標としているもので2007年3月にスタートをしました。その評価項目と言うのは、①ビジネス環境、②人的資源、③インフラストラクチャー、④国際金融市場としての成熟度、そして⑤都市のイメージと言う5項目を基準に査定され、100以上の都市・地域を1000点満点で点数化、毎年3月と9月に順位を公表しているものです。
そして今回の最新上位10都市の順位とは以下のものになっています。
1位は米国のニューヨーク(769点)、それに続くのが英国のロンドン(742点)、そして(新参者的なニュアンスになりますが)何と日本の東京(741点)が3位、そして中国の上海(740点)が4位、5位はシンガポール(738点)となり、香港(737点)が6位に着地、北京(734点)7位、サンフランシスコ(732点)8位、ジュネーブ(729点)が9位、ロ最後の10位がロサンゼルス(723点)...。
点数と言う括りでこの上位10都市を昨年のものと比較して行くと、実は意外な事に全ての都市がポイントを落としていると言う内容になっているのです。
この要因と言うのは、今年の初めから猛威を振るう形となったパンデミック(=新型コロナウイルス)の影響、また今や"恒常的"と評しても良さそうな米中貿易摩擦、更に英国の欧州連合(EU)離脱の影響等々...、全世界に大きなインパクトを与える数々の「マイナス材料」と言うものが経済全体に"負の付加"を与えたものと考えられていますが、結論を申し上げると、昨年の3位から6位にまで順位を下げざるを得なかった香港(34ポイントマイナス)が、残念な事に10都市の中で最も"割を喰った"都市となってしまったと言えます。
この結果を受けた香港特別行政区のスポークスマンは、発表の翌日となった3月27日、「昨年からの社会的事件が香港にかつてない挑戦をもたらしている」と述べ、学生を中心とした相次ぐデモ運動がこの結果に甚大な影響を与えたという認識を示したとのことです。そしてその上で、「簡素な税制に低税率、豊富なビジネス情報、資金の流動性など、金融センターとしての香港の競争力は依然として優勢だ」と再強調を行ったと言います。
更にそのコメントを後押しするかのように、(今回のデータ作成にZ/Yenと共に参画する事になった)中国総合開発研究所の金凌曲金融現代産業研究所副所長は「香港の客観的な各種指数は今も上海を上回っており、今回の結果は単純にこの半年間の騒動(デモ)が香港の評価を下方修正させただけである。つまり国際金融センターとしての真の意味での没落を意味すると言うことでは無い」とのコメントを残しています。
確かにこのコメントを"裏付けする"かのような評価項目と言うのは今回も存在しており、香港は「ビジネス環境」と「人的資源」では3位、他の3項目でも4~6位と言う成績を残しました。
換言すると、香港は今でも多くの企業がアジアの本店機能を置き、(またアリババのケースもある様に)新規株式公開(=IPO)等に至っては他のマーケットでは到底調達出来ないような巨額の資金を賄える市場であるとの認識が世界の金融業界から依然として"認められている"と言っても良いのかも知れません。
さて、果たして今後『世界3大国際金融センター』としての地位を香港は取り戻すことが出来るかどうか?
その意味で、この地の持つ「底力」がこれからの数年の間に試される事になるのは間違い有りません。