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BNOは自由世界へのパスポート?香港人が"海外英国市民"であると言う事実
更新日:2020年08月04日
本Blogの読者の方々の中で、香港人の約半数近くの市民には自地域で発行されるパスポート以外にもうひとつ国際的に自分の立ち位置を証明する類(たぐい)の「資格」を有していることをご存知の方はいらっしゃいますでしょうか?それは「英国統治」時代の名残りとも言えるもので、正式名称をBritish National Overseas(英国海外市民旅券)=略して"BNO"と呼ばれています。
これは、1997年7月1日以前、つまり香港返還前に出生した香港市民に一様に与えられている「資格」から生まれた旅券であり、これまでの基本的な用途としては長年の間(英国領事館から)一定の支援が受けられると言う"権利付き渡航許可証"と言う程度のものと捉えられていました。
従って、香港をベースにして生活している分には日常で得るメリットは全く無く、市民にはその存在の薄さゆえ、資格はあれど発行申請を行う者が殆ど居なかった(有資格者数約300万人に対して旅券保有者数は約35万人)と言う事実に良く表れています。
ところが、先般中国政府が可決した「国家安全維持法」によって英国がカウンターで持ち出したこの資格の利用方法が今、俄然注目を浴びることになって来ています。
上述の通り、香港では約35万人の市民がこのBNOを所持しており、実質的にはこの層の市民に対して英国政府は英国永住の道筋を開いたと言っても間違いでは無いでしょう。
具体的なステップとしては、このパスポート所持者及びその扶養家族は(英国政府の計画上では)、今後英国に5年間の滞在を許可されることになり、当然のことながら、その期間中において就業や就学についても英国人同様の扱いを受けれると言うことになります。
そして5年の時点で永住権申請が許可され(その結果)更にその滞在期間が1年強プラスされると晴れて英国市民権を享受出来ると言う内容となるのです。事実、この発表に対して中国政府は強い懸念を表明し、真逆の立場となる香港市民に取ってはこの件に関する関心が英国の移民相談室でも毎日のように問い合わせが増えて来ていると言った事例にも殊更表れています。
今回の発表後の「反応」が繋いでいく"近未来の可能性"と言うのが(以前のものと)まったく異質に見えてしまうのは、単純に香港人対象者の英国移住→英国市民化と言うだけに止まらないと言う点です。
直近の比較として挙げると1997年の返還前に起こった一過性の民族大移動がございました。この時の意味合いは当時の中国側の強権や出方を読めなかった層の香港人が一種の"セーフティーネット"を作ると言う意味合いで英国やカナダやオーストラリアと言った西洋国家に居住をしましたが、今回のそれは、彼等にとって完全に"不退転のものになる"と言う意味合いが横たわることです。
香港はその立ち位置ゆえ、恒常的に"期限付き租借地"と言う解釈が市民の間には固定観念として意識に刻印されてはいますが、中国の「国家安全維持法」の施行と言うのは、香港を民主的な自由都市としていた法制度そのものを中国が丸ごと呑み込むものと捉えられている為、その深度が比較にはなりません。
香港人="海外英国市民"→正真正銘の"英国市民"化を後押しする究極の策、BNO。
国際世論で孤立化を深めることを厭わず、アグリー・チャイニーズ(醜い中国人)と化し唯我独尊の道を進む共産党の進撃をどこまで止めるかが、今後の論点として注目するべきものとなるのは間違いありません。