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どちらが果たして有利なのか?海外子会社から来るロイヤリティ受取りに関する日本での「外国税額控除」と「損金算入」の比較

更新日:2020年08月25日

香港やシンガポールと言った軽課税地域・国に現地法人を構えたりすると、その拠点での利益について課税マターが発生した際、良く「外国税額控除」と言う言葉が登場します。一方で、こうした税額控除とは違う他の手段として挙がるのが「損金算入」と言うものがありますが、この両者を比較した場合、法人にとって一体どちらが有利に働くものと言えるのでしょうか?


以下の前提条件をベースに考察して見ましょう。

【前提条件】
1.海外子会社からのロイヤルティ収入:1,000
2.国内法人税:30%
3.海外子会社の使用料源泉税:10%

・外国税額控除:100
・外国法人税(損金算入):100

先ず、税引き前利益から見て行きましょう。これは外国税額控除の場合も損金算入の場合も同額として捉えます。

単純に外国子会社からのロイヤルティ収入なので、上述の通り、1,000です。

損金算入の場合はこの数値から直ぐさま100がマイナスされ課税所得を削ることが可能となります(1,000−100=900)が、外国税額控除の場合は(税額確定前の段階なので)これが出来ません。つまり、課税対象所得としては、損金算入のケースでは900であり、外国税額控除の場合は1,000のままと言うことになります。

ところが実際に日本の税額が確定すると損金算入が単純に270(900✖️30%=270)となるだけなのに対し、外国税額控除は300(1,000✖️30%)から外国税額控除が適用することになる為、結果として日本での納税額が200(300−100=200)となり、損金算入との比較では70ほど有利になると言う形になります。


つまり、結果的には外国税額控除を選択した方が有利となる訳ですが、では常にこうした事由が発生した際は外国税額控除を選択した方が良いと言えるのでしょうか?結論を申し上げると必ずしもそうとは言い切れない部分が存在します。この選択ポイントとして肝要なのは、①将来に於ける所得、②税金発生の見込みの2点です。


これは、外国税額控除では引ききれない場合の控除限度超過額の繰越期間が(現行では)3年しかない為であり、逆を言えばその間に控除事由の発生が必要条件となって来るからです。

仮に、事業の推進如何によって近い将来の間で控除限度額の発生が見込めない場合(例:海外事業発足して間も無い時は、継続的に欠損が発生することが予想されます)は、外国税額控除の限度超過額を繰り越したとしても3年以内にその額を使用出来ない可能性が高く、その為、結果的にその恩恵を無駄にしてしまうと言うことになり兼ねません。

従って、こうしたケースに陥った企業では損金算入の方を選択し、10年間(平成28年度税制改正)と言う長い繰越期間を確保すると言うことも"選択肢"として考えて置くのが実務的には必要と言うことになるのでしょう。


しかしながらこの損金算入で注意が必要なことが一点存在しています。

それは(その時点まで)繰り越して来た控除限度超過額や控除余裕額と言うのがその時点で消滅する為であり、過去から繰り越されて来た限度超過額が存在するようなことがある場合は慎重な判断と対応を行わなくてはならなくなると言うことになります。


以上、今回は【コーヒーブレイク】として税務廻りの話をご紹介致しました。

特に香港やシンガポールと言った、所謂、"軽課税地域・国"に現地法人を構える企業様にとってはこうした考察から来る心構えは必要不可欠の要素と言える為、経理担当者は日頃、国内税制についても鋭いアンテナを張り巡らして置くことが重要となります。

何故ならこの部分に関する手段の選択次第で単年或いは複数年に渡って手元キャッシュを健全且つ合理的に維持することに繋がるのですから尚更です。

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