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海外子会社の対する支援損は損金参入できるか?
更新日:2020年09月30日
香港の「機能」と言う面でここ20年くらいを見て行った場合、先ず思い浮かぶ点と言うのは中国と外国の"架け橋"と言う点であったと言うことです。実際、ビジネスシーンでこうした香港の役割は殊の外"重宝されて来ていた"のは事実であり、企業は文字通り、この地を中国でのビジネス展開上のキーポイントとして有効利用して来ていたのは事実です。
当然その流れを汲んだ動きとして出て来るものと言うのは、例えばその一例として日本本社から拠出する資金を香港子会社に貸付けると言う形、すなわち「貸付金」と言うことであったりする訳ですが、昨今のような度重なるデモやコロナ禍、或いは国家安全維持法と言った予期できない事象に遭ってしまうと事業上の結果で応えて行くことには困難な場合が発生します。
こうした際、会社経理が考えることと言うものの中には、この貸付けた資金を放棄することで子会社の運営上の負担を軽減するのと同時にこの貸付金が果たして損金扱い出来るかどうか?と言うことを確認することでしょう。
ではこの貸付金はこの場合、果たして会社側の思惑通りに損金扱い出来るものなのでしょうか?
結論をここで申し上げると、日本親会社のこのような支援損を損金算入することはなかなか難しいということです。これはこの場合に日本親会社が負担する損失は原則論として寄付金(国外関連者に対する寄付金)として損金不算入の取り扱いとなるのであり、例外的にその損失負担に「経済合理性」なるものがあると言った一定の場合にのみ損金算入が認められると言う形になります。
では次の質問として皆様の脳裏に浮かぶことと言うのは、この「経済合理性」と言われるものが果たして何であるか?と言うことでしょう。この「経済合理性」ですが、単純に表現すると「放置させるなどとして一切の支援を行わずに海外子会社を倒産させるよりも、支援することで再建させ、その結果、日本側(日本親会社側)の損失が小さくなる」と言うような場合のことを言います。
より具体的には、ここで行う債権放棄等が、例えば、業績不振の海外子会社の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので、かつ「合理的な再建計画」に基づくものである等々...、それなりの相当な理由があると認められる場合において寄付金の取扱いとせず、損金扱いで解釈→処理されるものとなります。
更に掘り下げてこの「合理的な再建計画」かどうかについての判断と言うのは、基本的には事実認定の問題と言え、支援額の合理性であったり支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性、また支援者による再建管理の有無等々について個々の事例に応じた総合的な判断を行うことになりますが、税務調査の際にはこれらの重要と思われるチェックポイントで相当に厳しい強度で調べが入って行くことになりますので注意と対策が必要となるでしょう。
また同時にこのケースは海外子会社への債権放棄となるので、日本だけの見方でのみ見ていると"片手落ち"になることも気にかけて置くべきです。換言すると、日本の親会社側が債権放棄を行うと言うことは、海外子会社における債務免除"益"の取扱いになるのであり、通常はこの場合、債務免除益は海外子会社にとって課税所得に含まれることになる為、繰越欠損金の枠内に収めるなどして、債権放棄に伴う追加納税が発生しないように考えて対処することも必要になるかも知れません。
ちなみに香港ではこのような場合、繰越欠損金がある限りはここで相殺し続けることが出来るので、この点でもかなりの融通が効くことを留意して置いて下さい。