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「中間持株会社」を作る際に関わる課税関係についての解釈
更新日:2020年10月21日
海外の特定地域に複数の子会社を有するような企業の場合、"地域統括"を目的として「中間持株会会社」を設立するケースが良くあります。特に税制上では"有利"と目される香港やシンガポールではこうした機能を当地の法人に持たせる現地法人が数多く存在していたのは事実です(=現在でも状況は余り変わっていません)。
このように、一時"竹の子"のように乱立したキライがある「中間持株会会社」ではありますが、当然これを作る企業側にはそれなりの確固たる理由と言うものが存在していました。
先ず、この「中間持株会会社」を設置するような場所(国・地域)の条件と言うのは、設立や管理自体が比較的容易であり、且つ(人材面も含めた)インフラ環境が整っていることが挙げられます。また、傘下の事業子会社群へのアクセスが日本の本社等よりも圧倒的に容易であるような立地や(上記の税制面を筆頭とした)制度面でのメリットを多分に含むところと言うことも肝要なポイントです。
香港やシンガポールが何故上記のような目的を抱える企業にとって選択肢のトップに上がっているのか?と言うのは、これらの面で他国を引き離す要素を多く兼ね備えていたと言うことであり、故に両拠点は海外事業のコントロールセンター化したと言う訳です。
では、実務的視点としてこうした「中間持株会社」を香港などに設立するような場合、構造的にはもともと日本親会社の下にぶら下がっているような他国事業子会社と言うものをこの「中間持株会社」の配下に移さなけれならないと言うプロセスが発生します。
上記を実現するに最も単純な手法というのは、新たに設立した海外子会社(中間持株会社になる会社)に他国の事業子会社の株式を日本本社から譲渡すると言うものが考えれられますが、現地法制において現物出資が制度として存在するような場合、日本の親会社が持っている事業子会社株式を新会社に現物出資する方法が一般的です。
但し、こうした事業子会社の株式が現物出資された場合に於けるこの「中間持株会社」にまとわり付く課税関係には注意が必要です。この場合、日本での課税関係が重点的に検討されていることが多くなると考える向きが主流になりますが、実際には(1)日本、(2)「中間持株会社」の所在地国、(3)他の事業子会社の所在地国の課税関係、でそれぞれ考えて置く必要があります。
そして、このうち特に重要となるのは(1)と(3)であることに留意して置きましょう。(1)については、本社100%保有の「中間持株会社」があり、その中で現物出資の形をとった場合、法人税等の課税が発生しない可能性が高いと思われます。
何故なら現物出資と言うものが、所謂、税務上の「譲渡」の扱いとなる為、その対象となる事業子会社については譲渡損益を認識する必要があるからです。但し、その現物出資が日本の法人税法上の"適格現物出資"(*)に該当してしまうと、税務上は譲渡損益と認識せず、事業子会社株式の簿価を「中間持株会社」の株式に付け替えることになります。
では(3)の場合はどうでしょう?一般的に日本の親会社が保有している海外子会社の株式を香港などの「中間持株会社」に譲渡するような場合、その海外子会社の所在地国では日本の親会社に対して譲渡益に対する課税を発動する場合が存在します。
(*)適格現物出資とは法人税法上の適格要件を満たし、譲渡損益が繰り延べられる現物出資をいいます。ここで現物出資の適格要件については、100%保有の海外中間持株会社を設立する場合には、現物出資に際して中間持株会社株式のみが交付される(金銭の交付がない)ことのほかに、100%保有関係が継続する見込みが要求されます。また、現物出資対象資産となる事業子会社株式については、発行済株式総数の25%以上を保有する外国法人株式である必要があります(直接保有の必要があると解されています)。