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香港後の先を選んで見たとしても...
更新日:2020年12月21日
香港脱出という言葉が最近では良く聞かれるようになって参りました。これは現在までの経緯に苦しむ香港市民、特に若年層を中心とした次世代の方々の"切実なる声"として徐々に具体化しつつあるものですが、実際の手段ということに視点を移すと中々現実的でないと言う側面があります。
つまり、夢と現実の乖離具合が今、彼らの中で重圧として押し寄せていると言う段階であり、その為にフラストレーションが充満しつつあると言うのが正確なところなのかも知れません。
さて、具体的な手段というところに視点を移すとどうなるでしょうか?
それは、例えば香港を離れ、他国を"終の住処"とした移民を行うと言うことなのでしょうか?それとも資産を散らす手段を先に行い、その後に自身のことを考えてアクションを執ると言うものなのでしょうか?今回は、彼ら香港人が採用し得るであろう幾つかのアイデアを挙げて見ました。
>シンガポールへの移住
シンガポールは香港とその経済システムが最も極似している国であり、多くの共通点を持っているのは事実です。低税率だけでなく、既に多くの華僑をその人口に抱えていること、また亜熱帯地域に位置すること等々、香港人にとっては余り違和感がなく生活が出来る可能性がある国と言えるでしょう。
しかしながら、このシンガポールも中国との取引という観点では一国として幾つかの弱みを抱えているのも確かであり、そう考えると台湾のように公式に移民を香港から受け入れると言う表明を行うとことは到底出来ないポジションとなります。しかしながら、「資産」を飛ばす先と言う意味で考えるとそのハードルは決して高いものではない為、自分達の資産をシンガポールで管理して行くと言うことは十分可能であると言っても良いものと思われます。
>台湾
台湾は米国同様、中国との対立姿勢を取ることに躊躇はありません。また文化的及び立場的にも香港と類似することが多く、香港人にとっても違和感を余り感じない形で自身と資産を移動させる事が出来る国であると言えます。更に(上述の通り)政府としても香港に対して救いの手を差し伸べようとしている国でもある為、実際の決断としてはむしろ香港人側にあると言っても過言ではない筈です。
しかしながら香港人の間では、一般的に台湾のこうした好意的な姿勢を歓迎しつつも、運命的にはやがて大陸(中国)側に飲み込まれるのではないか?との懸念が一部の層からは消えず、その為に彼らの選択肢の中には、台湾と言うオプションはあくまで暫定的な手段として使用する場合が想定され、中・長期的な視点となるとその優先順位は必ずしも高くはない先と考えられる国であると言います。
>英国(及び英語圏諸国)
英国は香港と歴史的に非常に深く関わった国であり、当然、香港を後にする香港人としては選択肢として一度は検討する先であると言えます。事実として幾つかのステップを踏むことで彼らは本当に英国政府から認められる正式な"国民"(=英国人)となる道筋も示されていることを考えた場合、一定の層の香港人(例:若年者)にとっては非常に魅力的な選択肢となり得るでしょう。
但しこれも100%素晴らしい選択肢であると言うわけではありません。何故なら1997年の中国返還前の数年間で当時の香港人達の一部は大きな希望を持って英国や他の英語圏(豪州、カナダなど)に移住を行いました。
しかしながら、結局のところ、その多くは数年後に香港に戻って来ることになってしまいました。その理由は中国が英国とのルールを基本的に遵守したことと、また移住先となった英国や豪州と言う、所謂「白人国家」での生活と言うのが、まさに差別やジョブレス(=仕事無し)のものであったことが多く、彼等が移住前に思い描いた夢の生活とは雲泥の差であったからであると言われています。
従って今回も同じような状況になる可能性は決して低くなく、現実的には甘い汁は吸えないことが想定出来ます。
>日本
日本は香港人にとって観光先国としてはここ10年以上、常にトップの位置であったと言っても過言ではありません。それこそ、数日の休みを取って日本に弾丸旅行する層もいるなど、彼らに取ってはアジア諸国の中で一番の魅力を兼ね備えている先が我が国と言えるのです。実際、日本は香港の水準から見ても不動産価格や物価も相当なレベルで低くなっていたり、ネガティブな面よりポジティブに捉える層が相当数存在すると言っても良いでしょう。
但し、言語面でのハードルや日本人自体の中にある閉鎖性、また規制等の多さに代表されるこの国独特の風習が彼等を悩ませる可能性は高く、更には所得や運用益、相続などに関する税額の異常な高さを考えるとその情熱や意欲が"尻窄みする"形になるかも知れません。
勿論、移民と言うような大それたものではなく、「投資」と言ったビジネスの形で拠点として地盤を固め、日本との関係を維持すると言うものであれば、比較的簡単に彼等の中の日本愛は充足させられることは可能であると言えるでしょう。その場合は日本は彼らに取って魅力を維持する国の一つとなることは間違いありません。
以上、様々な国を香港人の選択肢として記述しましたが、総論として言えることは、どの国を選択するにしてもその際に横たわる課題と言うのは意外な程"ハードルが高い"と言うことが見て取れます。
その意味では短期・中期・長期のプランニングを通して検討を行い、決してプラス面だけにフォーカスを当てるのではなく、マイナス面をどの程度まで許容出来るのか?と言うところの覚悟が必要であると言うのが、本件に関する「最重要課題」であると定義しても良いのではないでしょうか。