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クロボ「M&A」に於ける税務上の注意点とは一体何か?
更新日:2020年12月09日
海外進出を行う際に選択肢の一つとしては独自進出の他に「M&A」と言う手法があります。
これは、直接現地に子会社設立を行い、時間をかけて事業を育てて行くと言うオーガニック(所謂、独自進出)な方法より遥かに効率的なものであり、今までは外国から日本にやって来る外資系企業の典型的なやり方のひとつ(インバウンド型)として認知されていました。
ところが昨今では日本企業もその意識が徐々に根付き始めているのも事実であり(アウトバウンド型)、その証拠に、コロナ禍で実際の動きが抑制される前の時点までは、ビジネス界にこうした問い合わせが増えて来ていたとのことです。
さて、では実際にこうした形で「M&A」を進めて行ったとした場合、具体的にはどのような影響が日本の親会社にあるものなのでしょうか?
例えばですが、この「M&A」を行うことに対する親会社への影響と言うのは、海外子会社の設立を独自で行った場合と同様に、先ずは子会社株式の取得という形で表れます。
税務上、子会社株式の取得価格は、単純に外貨建ての買収価格を円換算したものですが、子会社株式の取得に関わる付随費用と言うのは、この際に子会社株式の取得価格の中に含めなければならない点に注意が必要となって参ります。
なお、この付随費用については損金として処理できるかどうかと言う点で税務効率上の面で大きな影響が発生する可能性があります。
すなわち、付随費用を子会社株式の取得価額に含めるような場合はその子会社株式を売却するまで損金参入が出来ないこととなり、支出時点で損金参入するのに比べて、損金参入タイミングがかなり遅くなるか、売却の行方次第では(売却が成立しない等)半永久的に損金参入できない事態もあり得ると言うことを含んで置く必要が出て参ります。
ではこうした「M&A」の手法は独自に子会社を設立する場合と何が違うのでしょうか?
先ず前提として明らかに違うことは、買収の場合、その会社にとって海外事業が完全な新規のスタートではないと言うことです。つまり、買収時点で買収対象会社が既に存在し、また事業活動を営み、過去の債権債務関係を有していると言う点がポイントになります。
そのため現地企業の買収にあたっては、買収前に徹底したデューデリジェンス等を行う等して潜在的なものを含めて債務(租税債務や発行可能性の高い税務リスクを含む)の洗い出しを行うことが重要になって来るのは言うまでもありません。
では、2番目のアイデアとして海外子会社を持つ日本企業買収する場合はどうでしょうか?
これも上述の海外企業買収する場合と同様、買収前にデューデリジェンス(以下、"DD"と表記)によりリスクの洗い出しを行います。日本の親会社だけでなく、この会社が有する海外子会社もDDの対象に含めなくてはなりません。
この時注意するのは海外子会社所在国の税制を理解し、調査の対象とする税目を決定する必要があります。法人所得税は勿論、所在地国において重要な間接税(例えば付加価値税:Value Added Tax=VAT)についても一定のスコープを前提として、調査対象に含めるのが良いでしょう。
いずれにせよ現地専門家のサポートを受け、現地の税法に基づく税務リスクを軽減する必要があり、こうしたスタンスは通常の海外企業に対する税務DDの場合と同様の位置付けと理解下さい。
また、その海外企業が買収対象である日本企業の海外子会社と言う建て付けでもある為、日本国内の税制についても検討事項があります。つまり海外子会社に関わる現地の税務リスクに加えて、海外子会社保有する日本企業の税務リスクも考えなければならないと言うことです。
具体的には移転価格税制やタックスヘイブン対策税制がこれに該当するので国際税務に関する実務に長けた税理士事務所の選定は、この点にセーフティネットを設ける意味では不可欠な要素と言えるかもしれません。