海外での事業展開を行っている会社は子会社を設置して理想的なオペレーションを目指すものですが、その際、例えば販売対象市場や生産の主要拠点を中国とするような場合は、香港にその統括機能を持たせる形で進出を行う(日本親会社から出資→香港子会社設立)のが一般的なやり方であると言えるでしょう。
このように、海外子会社に親会社が出資で資金を供給してその海外子会社が後に利益を創出した場合、通常、株主である親会社に海外子会社は「配当」と言う形で資金還流させていくことが常であると言えます。
ご存知の通り、「配当」は子会社の税引き後利益から支払われます。上記のような香港→日本間で手配をするような場合は香港子会社が
(1)利益を稼得し
(2)そこから現地で法人所得税を支払い
(3)その残りを日本親会社に配当する
と言う順序になります。
処理的にはこうした「配当」と言うのは香港子会社側では損金にならないと言うことになるわけですが、問題はこのような香港子会社からの「配当」が日本親会社の側でどのように課税されるかと言う点です。
結論を言うと、その「配当」については"ほぼ課税はされない"と言うことになります。
ではそれは一体何故なのか?と言うことになる訳ですが、ここで出てくるのが「外国子会社配当益金不算入制度」です。
この「外国子会社配当益金参入制度」の利点は端的に言うと、海外子会社からの配当に伴う日本親会社の税負担が(通常の税率などと比較すると)非常に少額となるよう設計されていると言う点にあります。ところが、例えば上記のような香港子会社が日本の親会社に送る「配当」に本国で課税をかけてしまうと構造上、二重課税(香港で一回、日本で一回)が発生することになってしまいます。
そもそもこの制度の目的と言うのは香港のような低税率地域で稼得した利益と言うのが、大きな追加の税負担なしに日本に還流させることになっているので、この親会社が受取る配当には一種の優遇措置を施していると言うのが建て付けです。
但し香港のような軽課税地域ではない所ですと現地での配当源泉税が日本の親会社にとって税負担の構成要素となる面も出て参ります。この点、香港では法人税率が16.5%、配当源泉税率に至っては0%となっているので最大限のメリットを享受できると言うことになる訳です。
具体的数値で示すとその差は歴然と言えるかも知れません。
例えば香港子会社からの「配当」については100の「配当」に対して1.5%しか課税されることになりません(100 x 5% x 30%=1.5)。
その対比として例えば台湾を上げると配当に掛かる源泉税が10%となるため同じ配当金額を設定しても香港の1.5に対して11.5もの税務コストを見込んで置かなくてはならなくなる訳です。
なお、現行の税制では外国子会社において損金参入される配当については、「外国子会社配当益金参入制度」の対象外(つまり益金参入)とされています(ただし経過措置あり)がこれはOECDのBEPSプロジェクトを受けた改正であり「支払国では損金算入、受領国では益金不算入」と言うミスマッチ(=ハイブリッドミスマッチと言います)に対応するためのものとのこと。
ちなみに「配当」の回収は移転価格税制の対象外となっている為、配当額の水準というのは、海外子会社の配当可能利益の間以内で、親会社が自由に決定することが出来ると言う事も利点のひとつと言えるでしょう。
外国子会社の定義:
外国子会社とは日本の親会社がその発行済み株式等の25%以上を配当等の支払い義務が確定する日以前6ヶ月以上引き続き保有している外国法人を言います。なお、この25%以上と言う持株比率は租税条約により軽減されている場合もあります。
外国子会社配当益金不算入制度の定義:
2009年度税制改正において導入された制度であり、一定の外国子会社から受け取れる配当金を益金不参入とするものです。これは外国子会社からの配当にかかる二重課税排除の方法を従来の間接外国税額控除から変更する意味を有しています。
本制度の目的は適切な二重課税排除の方法を維持しつつ、制度を簡素化することにより、外国子会社の留保金を日本に貫入(配当)させ、経済の活性化を図ろうとするところにあります。