香港の方々にとっての本当の正月と言うのは言うまでもなく、「旧正月」のことです。厳密に言うとこれは中国を発祥とする慣習のひとつではありますが、それは中華系が多くを占める香港市民にとっても同様且つ重要なものであり、各々がこの時期、来る年の反映を夢見、心新たに新しい年を始めます。
今回は、こうした香港市民が行う旧正月時の幾つかの"しきたり"をご紹介することで、日本のそれとはまた"一味違う"スタイルの正月に触れて参ります。果たして当地の人々は一体何を信じ、そして何を望んでいるものなのでしょうか?
以下にご紹介する事例は、ひとつの文化人類学的な側面を持つと言えるかも知れません。
◎海老
旧正月の期間、一般的な香港人家族の夕食には海老料理が含まれていると言います。その理由は、広東語の「海老」の発音("ha")が人々の笑い声に似ている(=幸福を呼ぶ)と捉えられているからであり、それを信じるが故、香港人は旧正月の夕食にいつも海老を食べると言う風習が生まれたとのことです。
◎竹&水仙
竹や水仙は香港では健康や富、家族の団結を意味すると考えられています。また幸運のエネルギーを呼び込むために、赤い提灯を家に飾るも伝統的な習慣で香港人家族の中には、毎年その年の干支がどのような影響をもたらすかを、常に気を配っている香港人家族も居るとかいないとか...。
◎みかん&金柑の木
みかんと金柑の木は、香港では"富"と"繁栄"をもたらすと言われています。従って旧正月の間の街中のデコレーションはそれこそどこもかしこも玄関先に可愛らしいみかんの木が備え付けられており、通常は"コンクリートジャングル"たる香港の街風景にとっては"一服の清涼剤"と形容しても満更ではないものです。
◎蟹と蟹味噌
マンダリンオリエンタル香港と言った最高級のレストランでもそうであるように、旧正月の期間のレシピでは「幸運」を感じさせたり縁起が良いと考えられている蟹料理が定番です。特にその中でも卵麺は最も人気があるメニューのひとつと言えるでしょう。その他のお勧めは野菜と豆腐乳の煮込みです。この料理は野菜が心身を浄化すると伝える仏教の教えに由来しているとのことです。
◎利是(ライシー)
香港人は、旧正月前、銀行に行き新札を手に入れ、丁度日本の"お年玉"にあたる"利是(ライチー)を用意するのが習慣です。自分より年下や後輩に幸運を授けると言う名目がある為、一般的には家族や友人、子供、従業員などにこの利是を配ることになります。それらを受け取る際の彼等の笑顔は何歳になっても純粋無垢なものが伝わって来ます。
◎服装
旧正月の初日は、中華系で最も好まれる色であ利、ラッキーカラーの象徴とされる「赤」を基調とした服を着るのが定番です。もともと、この赤と言う色は、中華系の文化圏では悪い運気を追い払う効果があるとされており、その為、彼らは好んでこの時期にこうした色の服を着ることになるのです。
◎ライオンダンス
旧正月の迎える前日である大晦日になると本場中国の獅子舞が様々な場所に出没するのがここ香港(及び本場中国)の特色です。この獅子舞、英語ではLion Dance(=ライオンダンス)とも呼ばれ、"年獣(Nin)"と称される旧正月の大晦日に現れる邪悪な獣を追い払うためにライオンダンスを舞わせたと言うのが始まりと言われており、それが現在の旧正月でも確固たる"伝統"のひとつとして受け継がれているのです。ライオンダンスには南方獅子と北方獅子の2種が存在しており、香港では南方獅子が使われるのが一般的です。