2021年が明けることになっても、香港の立ち位置というのは(昨年から一層本格派した中国の方針で)以前のものとは"異質"のものになって行きそうです。市民は平静を装っていますが、その心中たるや忸怩たるものとなっているのは想像に難くありません。
3月4日、アメリカのウォールストリートジャーナル誌は「世界経済インデックス」発表しました。結果は昨年2位にランクインしていた香港ですが、残念ながら今年はそのリストから姿を消すことになりました。これが如何に衝撃的な出来事であるのかは、1995年から2019年までの25年間、ずっと1位を堅持していたのがこの香港だったと言うことにあります。
一昨年のデモを発端として、コロナ禍、更に「国家安全維持法」の施行と言った去年は厳しいものであったのは事実ですが、それでも辛うじて面目を保つ結果(世界第2位)に留まりましたが、今年はとうとうその流れを払拭出来ず、完全にリストから消え去ることとなってしまったのです。
勿論、この原因となったファクターは明らかですが、手綱は緩まるどころか一層の"締付け"が予想されています。3月5日、全人代常務委員会の王委員長は香港の"憲法"である「香港特別行政区基本法」について、"一部条項を改正する必要がある"と発表しました。これは香港の行政長官や立法会議員(国会議員に相当)を選出する選挙規制の改正を意味することになります。
王会長は、香港の選挙制度に"抜け穴"があるため、(野党派が)香港独立を主張できるようになっている"、と指摘し、これらのリスクを"排除する必要がある"とした訳です。
では香港の「基本法」に沿うその選挙制度と言うのはそれほど北京にとって危険視されるものなのでしょうか?実際のところを見て行くと、この選挙制度と言うのは親中派に非常に有利な仕組みになっており、それは北京も理解しているところです。
つまり、どんなに頑張って見たところで民主派が香港政府のトップである"行政長官"職に就くのは至難の技であり、それをここまで"根こそぎ"に権利の剥奪を行う必要が果たしてあるのかどうかについては甚だ疑問がつくことになります。
しかしながら、それでも(現行の形では)民主派が選挙に参加できる権利や市民も立法議席の半数を直接選挙枠として与えられている"自由"について呑み込みたくないと言うのが(つまり他の省同様、完全排除して置かなくてはならないと言う考えが)トップの中にはあるようです。
3月末までには常務委員会がこの制度変更を行い、それ以後は、香港の選挙体制そのものの風景が一変することでしょう。つまり、今後は親中派の、親中派による、親中派だけの候補者指名、そして市民の直接選挙枠消滅となる流れが濃厚だと言うことです。
上述の全人代常務委員会の王委員長の"結び"の言葉が香港の未来を物語っています。
彼は、「香港人が香港を管理する」と言う文言の代え、「香港の統治権は"愛国者"がしっかりと掌握する」と宣言し、発表を結びました。
これは(言い方を変えると)「香港の統治権は愛"党"者がしっかりと掌握する」と言うものに等しいと言えなくもありません。少なくとも中国を知る人間から見れば、その解釈は間違いない響きとしてその耳に聞こえてくるものではないでしょうか。