世界的なパンデミックとしてこの一年を席巻した新型コロナウィルス。最近では米国ファイザー製薬などがこのウィルスに対するワクチン開発などもようやく臨床試験を終えて市場に出始めてはいますが、この間に及ぼした影響と言うのは人々の生活や仕事のスタイルを大きく変えるものとなったのは間違いありません。
現在の趨勢から言うと、アジア、特に香港では、2020年11月から拡大した新型コロナウィルス流行(第4波)が、幸いにも徐々に収束の方向に向かいつつあります。しかしながら、この間に大きく落ち込んだ雇用情勢に好転の兆しは見られていないと言うのが実情ではあります。
今からひと月弱前になる今年の2月中旬、香港政府統計局が発表した雇用最新データによれば調査対象期間となった2020年11月〜2021年1月の失業率と言うのは実に7%も上昇し、統計上では2004年以降の17年間において最悪を記録することになったとのことです(失業者の実数は25万3,300人)。
実際の所、香港でのこの失業者の数と言うものは、2020年の初めからこの新型コロナウィルス感染症の影響で経済、社会活動の制限が続いて来ていたと言うこともあり、右肩上がりに増え続けいました。
上述の統計局によれば、最新データの調査対象期間における香港の就業人口は363万600人で前回の調査対象期間(2020年10月〜12月)に比べて約1万7,100人が減少し、逆に当地の失業者数は約7,500人増加したとのことです。また不完全就業者数と言うのも約14,400人増えて14万8,200人となりました。
では、この統計を横の視点から眺めて見ると、業界的には主要産業の殆どにおいて失業率及び不完全就業者率が上昇したことになっています。観光業や消費関連サービス業は言うに及ばず、教育サービス業や芸術・娯楽サービス業にまでその"負の連鎖"は及び、結果的に雇用環境全体の悪化が顕著となりました。また、小売り・宿泊・飲食などを含む「消費及び観光関連業界」の失業率は11.3%と前回の調査対象期間より0.7ポイント上昇したと最新のデータでは示しています。
その顕著な事例としてひとつ挙げさせて頂くと、観光関連の一翼を担う運輸業でも、この影響は甚大である言えます。中でも状況が過酷と見えるのが、香港の"フラッグシップ"たるキャセイパシフィック航空です。同社は昨年に6月香港政府による救済措置(政府基金)により約270億香港ドル(約3,700億円)の資本注入を受けていますが、その4ヶ月後には全世界のグループ従業員の4分の1近くにあたる8500人削減や配下ドラゴン航空の運行停止するリストラ計画を発表しました。
このキャセイの事例が示すように、各々の企業レベルでにまでその影響を落とし込んで行くとその深刻さは尚更厳しいものが見えてくると言う形です。
ではそんな中でもこのコロナの影響が最も深刻に表れている業界は何でしょうか?それは飲食サービス業です。最新のデータ上ではその失業率が14.7%、不完全就業率が10%を記録することになりました。
これは同業界従業者の内のほぼ4人に1人が、職を失うか雇用が不安定な苦境に直面していることを示しています。これらの数値を受けて香港の厚生労働長官は「新型コロナの第4波が収まりつつあるものの、経済活動の正常化には時間がかかる。労働市場は、短期的には悪化が続く」とコメントしています。
このように、ようやく香港では収束が見えつつあるこのコロナ禍ではありますが、この一年を蹂躙した爪痕は生々しく、また、今後数年続くと考えられる"イタチごっこ"を考えると経済のキャッチアップは経済論者が言うような"数年後"なのではなく、むしろ10年単位になる可能性すらあります。
果たしてこの顛末と言うのものは、一体どのようなエンディングを迎えるものなのでしょうか?