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実は"香港潰し"が現実的な選択肢ではない中国の事情

更新日:2021年08月31日

昨年の6月に施行された「香港国家安全維持法」(以後、"国安法")以来、この一年と言うものは香港にとって本当の意味で中国の猛威に晒された時間となったと言っても良いかも知れません。何故ならこの国安法はそれまでの「一国二制度」体制を根本から踏みにじるものであり、中国はいずれ香港を併合してしまうのではないか?との大きな懸念が同地域を揺さぶることになっています。

事実、その後の動きを見ると香港警察は同法を使って域内の活動家や民主派議員等を相次ぎ逮捕・収監を行い、そして今年の6月には香港"民主派系"新聞社であるアップルデイリー社をも廃刊へと追い込んでしまいました。

このように、一年前に皆が描いた"懸念"と言うのは徐々にその形を実際の現実社会に現しつつあるように見えていますが、果たして中国は、"東洋の真珠"と言われたこの香港をこのまま完全に潰してしまうつもりなのでしょうか?


結論から言うと、中国にとってこそ、そうしてしまうことは"非現実的な選択"であると考えます。


何故なら今現在の中国にとっても香港がどのような"役割"を果たしているのか?と言うことを見て行くとそれは明らかとなるからです。

この役割面は、特に貿易面と金融面に"凝縮されている"と言っても良いでしょう。


まず、貿易面から見て行くと、中国にとって最大の輸出相手国は貿易戦争の"敵国"であるアメリカとなる訳ですが、2位に続くのは(日本でも欧州でもなく)実は依然として香港なのです。

無論、香港が貿易で得る中国製品を全て域内で消費するのではなく、その殆どはここを経由し世界各国に輸出されるルートを辿りますが、態々香港を経由することによって(米国などの)中国製品に対する関税を上手く迂回することが出来るのですから「香港」の利点を利用しない理由はありません。

つまり、中国にとっては"名を捨て実を得る"為の格好のループホール(抜け穴)として香港の価値が現実的に存在することになります。

この"スキーム"によって、中国は対外貿易の"主要中継点"として香港を構えることで効果的にビジネスを行えるメリットを今現在でも享受しているのです。


では金融面ではどうでしょうか?


中国は、そもそも計画経済ありきの構造が大前提としてある為、これが一種の"足枷"となってしまい、結果、悪名高き「資本規制」が今でも普通に実施されています。最たるターゲットは金融市場となる訳で、ここはまさに"当局の言いなり"と言うのが実情です。

具体的には金融市場や銀行システムに対して政府は意のままに介入する訳ですからまさに"公平もへったくれもない"と言うのが西側諸国や西側企業の偽ざる心境と言っても良いのではないでしょうか。


しかし、こうした中国国内の"足枷"は、この香港市場においては存在しません。これまでも当Blogで触れて来た通り、香港は世界最高の金融センターのひとつであり、これは即ち"自由かつ開放的市場"が前提となっています。従って、あらゆる国の企業は(例えそれが中国企業であったとしても)香港の株式市場や債券市場を利用することで、外(国)から大きな資金を呼び込むことができるのです。

その一例を挙げると、それは新規株式公開(IPO)があります。ここでは、あのジャック・マー率いるアリババ集団ですら(NY上場だけでは飽き足らず)2年前に香港で重複上場を成し遂げました。また中国国有企業である工商銀行やIT大手の民間企業の殆ども香港に上場していることも考えると中国金融の心臓部的な役割を果たす巨大企業達の資金調達を、この香港が運営・管理していることになるのです。


更に香港ドルが米ドルに連動している面も重要です。

中国が香港を維持することは、香港ドルを管下に置くことでもあり、これはイコール"国際決済通貨"で資金調達できることを意味している訳ですから手放すわけには行かないのは明らかです。加えて、法の支配、有能な規制当局、低い税率、自由な資本移動、英語の使用と言った様々な点で、香港は中国本土のライバル都市と比べて大きな違いがあるのは明らかであり、例え上海であっても早々に香港の"代替市場"と言い切る訳には行かない実情が存在します。


つまり、こうした様々な面を一種の"フィルター"として事象を分析して行くと、ひとつ明らかになる事実が炙り出される形となるのに気づかれる方々も居るかも知れません。それは、弾圧を続ける(とされている?)中国が全く手を付けていないエリアが2つあることが見えて来るのです。


それが上述している貿易と金融面です。


よって結論として言える事とは、中国は、香港を(少なくとも現時点では)本気で潰すつもりは毛頭無く、香港の利点を活かしつつ、本土経済を支える役目を依然として与えていると言うことです。


ゆえに、一部の香港市民(例:富裕層)などは、そうした面が見えているだけに、香港を離れるアクションを起さず泰然と状況を俯瞰する道を選びました。

ある意味において、彼等のスタンスこそ今後も香港が"安泰である"ことを如実に示していると言える一面ではないでしょうか?

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