そもそも世界がこの段になって盛んに"脱炭素"を叫び始めているのには理由があります。それをひと言で表現するのならば地球にとって人類が登場したことによる弊害=テクノロジーの進化による温暖化が現実的に深刻度を増しているからだ、と言うことです。温暖化が招く事態と言うものは場合によったら人類の存亡にすら関わる可能性がある程の重要なテーマであり、ゆえにこれは、(産業革命前後から顕著化して止められなかった流れに)一種の警鐘としてそうした進化に対する"楔を打ち込む"ことを示唆しているものと言えるでしょう。
現在、世界がターゲットとしている目標値と言うのは気温上昇幅を2度未満に抑えることであり、これを実現すると(2010年度比で)温暖化ガスの発生を約25%削減することに繋がります。では現在の状況はどうなのかと言うと、これは残念なことに、このまま2030年まで同じ程度の取組み具合で推移した場合温暖化から発生するこの有毒ガスの発生量は16%も増えてしまう勘定になるとのことです。
こうしたこともあって、米国やドイツ、日本などを筆頭とした先進諸国は敢えて厳しい達成目標を設定することでこの憂慮すべき状況の打破を志している言う訳です。青写真としては、2030年と言う年までに温暖化ガス発生量を50%程度削減すると言うゴールを目指しており、またその延長線上としての2050年には実質的にガス排出量ゼロ=即ち、"カーボンニュートラル(炭素中立)"を実現することにコミットをしています。
しかしながら、先進国がこのように自己を律する為の厳しい目標設定をしている一方で、"新興国"とカテゴライズされる国々、例えば今回のグラスゴー会議を当てつけのように欠席した中国、ロシアなどの国々はこのカーボンニュートラル化を先進国のそれより10年遅い2060年に設定するなど世界各国では足並みを揃える気配はありません。
実際のところ、こうした環境問題を政治的な取引材料化してしまうあたりが"如何にも..."と言う感じには見えなくもありませんが、そんな中で10月13日に香港政府が発表した「香港気候行動計画(2050)」と言うプランは、最近の"親べったり(?)"と言う姿勢から一線を画すような、久々に香港の独自路線を踏み出した目標となったと評価をしても良いかも知れません。
この「香港気候行動計画(2050)」と言うものを香港が本当に実施する為のコミットメントは"かなりものがある"と言う高評価がこの数週間の間ですら出て来ているのには理由があります。それは、彼等が発表した予算枠の大きさです。香港政府は今後15〜20年間において、実に2,400億香港ドルをこのプラン達成の為に投じる方針を決定しました。そしてその計画のビジョンは「二酸化炭素(CO2)排出量ゼロ、居住に適した都市、持続可能な発展」と言う3本の柱であり、最終的には香港に於ける気候変動対策とカーボンニュートラル達成を目指すものです。
香港は、以前から"公害"という断面で非難や揶揄を受ける都市であったのは事実であり、中でもCO2発生は甚大で、今回の計画ではその原因となっていた分野(発電、運輸、廃棄物)の徹底撲滅を宣言しています。具体的には発電部門でCO2排出量ゼロ、省エネ・グリーン(環境配慮型)建設、グリーン運輸、市民廃棄物削減という4大戦略・措置が大きな焦点となる形になります。
こうした香港の積極的な取り組みの宣言の背景には、当地を世界に対する"クリーンシティー"としてのイメージを演出・確立することで、より多くの投資を再び世界から集うことを目的としているからであるのは想像に難く有りません。これらが文字通り実現するような暁には、かつて"アジアの真珠"と言われた香港の復活劇の片鱗が恐らく2030年を迎えるこれからの10年の間においてその「顔」を表出させて来ることは、"間違い無い"と言っても良いと言えます。未来を見据えるこうした香港の確固たる準備。
日本もアジアの一員として、この躍進振りに注目・期待せざるを得ません。