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いつまで続く?コロナ対策に"慎重"姿勢を貫く香港行政
更新日:2021年11月17日
香港のトップであるキャリー・ラム行政長官は10月26日に記者会見を行い、今後、水際対策で緩和する場合の香港と海外の往来について、"ウィズコロナ政策"が始まる場合は、中国本土を除いて"隔離短縮"からスタートする、と発表しました。
その草案は「A組指明地区/グループA Specified Places(High-Risk)の」の国を除き「B組指明地区/グループB Specified Places( Medium-Risk)」に属してワクチン接種完了した者であれば、「C組指明地区/グループC Specified Places(Low-Risk)」の貿易対策を適用→強制隔離期間を短縮(14日間→7日間)すると言うものです。
香港のコロナ状況と言うのは10月末時点の数字で、累計感染者数が12,284人、死亡者213人と言う内訳となっています。また、ワクチン接種者数は、1回目接種終了者数が4,617,708人であり、2回目接種終了者数が4,425,315人と言う状況であり、11月1日には24日連続で市中感染が"ゼロ"と言う数字も記録しました。惨憺たる状況となってしまったシンガポールなどを思うと時期的としてそろそろ"開港"しても良いのではないか?と言う機運も域内市民の間には高まりつつあると言っても決して大袈裟ではないでしょう。
このように優秀な結果をマークしている香港ではありますが、上述の行政長官の発表の通り、今は依然として慎重な姿勢を崩してはいません。その理由の一つは中国です。香港にとっては北京の意向が最優先課題であり、今後大きなイベントを控える親(中国)の足を引っ張りたくない子供の心境と言ったところでしょうか?
事実として香港にとって重要なのは、香港居民の中国本土往来について"隔離無し"を如何に早く実現するかと言うことです。その為、域内の防疫対策を中央政府に評価して貰うべくより一層の防疫対策の強化と合理的な施策が実施されて来ていると言っても良いでしょう。
具体的な強化面としては領事館の関係者やビジネスマン、国際線の乗務員、政府関係者などが隔離無しで香港に入境できると言う特例を撤廃する反面、合理面としては"物資の輸送"と言う生活(ライフライン)に直結する部分について関わる運輸業者はそのまま"隔離なし"と言う扱いなどが一例です。
このようにアグレッシヴな施策を打ち出す香港ではありますが、唯一、懸念点をこの中で挙げるとすれば、香港の「国際金融センター」としての位置付けでしょう。何故なら他国、例えば欧米、シンガポールなどでは、既に"ウィズコロナ"へと施策を打ち始めており、ワクチン接種完了など一定の条件を満たせば"隔離なしで国境越えられる"ケースが増大しているからです。
これを見て、金融業界関係者の中には、「香港は入境制限が厳しく国際金融センターとしての地位低下を招く可能性がある為、場合によっては香港以外に移動させることを検討している企業が沢山ある」と言う内容の書簡を財政長官に送ったと言う者も出ているほどです(但し、こうした噂は兎角"尾ヒレ"がつき易いものではあるので必ずしも真実であるかどうかは疑問ですが)。
何にしても、香港政府は最低でも中国政府が現在準備をしている北京五輪終了までは慎重姿勢、所謂、"ゼロコロナ"施策を維持する方針であり、中央政府がこのポリシーを欧米などの国のように"ウィズコロナ"に転換しない限り、(本音として)は積極的な"開港"の姿勢は打ち出したくとも、現実的には打ち出せないと言えるかも知れません。但し、このスタンスはネガティブばかりな面だけではないのは事実です。
何故なら実際のところ、コロナ感染については世界は"勝ち組と"負け組"が今明確に分かれつつある、言わば"二極化"の局面の段階であり、慎重姿勢の継続且つ勝ち組の香港としては"金融センター"の名を多少犠牲にしても元は取れると踏んでいるのかも知れません。