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SPAC導入を決定した香港。果たしてこれは追い風となるのか?

更新日:2021年12月25日

香港の上場市場と言うのはメインボードとGEMボードの2つに分かれています。前者は丁度日本で言う"東証1部"を意味する市場のことであり、後者はJasdaqのような、所謂、新興企業を中心とした上場テーブルとなっています。

2018年に上場の基準を一部変更し、一部の産業に属する企業(例:バイオ系やAI系と言った新興が期待されるビジネス)には緩和策を導入したことを皮切りとして、大手(例:アリババと言った巨大企業相手には)種類株などに関する融通性を持たせることで資金調達を後押しする手配を行いました。


さて、今回のトピックとしてご案内する内容は、先般香港証券取引所が、特別買収目的会社("SPAC"=Special Purpose Acquisition Company)の上場を可能にする制度を、早ければ2020年1月から導入する方針を打ち出したと言うことです。


このSPACと言うものは、この会社が自らの事業を営まずにして、有望な未公開企業買収することを目的とした企業のことを言います。他では「白地小切手会社」であるとか「ブランク・チェック・カンパニー」などとも呼ばれることもあり、事業を持たない企業であるため「空箱」に例えられることもあります。


このSPACによる買収を通じて上場するメリットと言うのは以下の通りです。

1)少額の資金で未公開株式への投資に参加が可能
文字通り、このSPACを活用する事により、小学の資金で未公開株式取引に参加が可能となります。更に、未公開企業はこのSPACに買収された後、株式の中途売却も可能になる為、一般的な未公開企業投資の中途売却上の難点をクリアすることが可能。

2)投資家保護の規定があるため、投資を回収できる可能性が高い
SPACには投資家保護の規定(買収期限や信託など)が存在する為、投資額の回収は現実的な選択肢となる可能性が高い。即ち、万が一、SPACが未公開企業の買収に失敗したとしても、投資した資金の殆どが投資界に返還されると言うこと。


ではデメリットと言うのは何でしょうか?

1)未公開企業の買収を短期間で完了する必要がある
SPACにはタイムラインが設けられている為、上場から24ヶ月以内に未公開企業を買収する必要がある。これは交渉に於いて足元を見られることにも繋がるため、買収価格が高騰する可能性を含んでいます。

2)未公開企業への投資リスク
これは投資をする上での普遍的なリスクと言えますのでSPACだけに限った話ではありません。買収の対象となる企業が簿外債務を持っていたり、コンプラ上の問題を抱えている可能性はどこにでもある為、こうしたリスクの排除が完全に成されるかどうかは常に懸念事項として存在します。


香港証券取引所では、上場時の選択肢を増やすべくSPACに関する意見交換を実施して来ており、今年の9月の時点でこのスキームに関する協議内容まとめていましたが、その骨子は市場関係者から「米国やシンガポールの上場よりも厳格であり、香港への誘致が困難になる」との声も出ているのは事実です。

こうした経緯を踏みつつも、香港証券取引所は依然としてSPACに関して厳しい上場基準を設ける方針を変えていませんが、今後は業界の意見をより一層取り入れることで、SPACへの出資資格やIPO時に付与される新株引受権(ワラント)条件を緩和する方向で調整していくことになるのは必至でしょう。


何れにせよ、この手法を前面に押し出す形となる香港SPAC上場。果たして来年度以降の香港経済の起爆剤になるでしょうか?関係者の期待を背負う形となる新しい「資金調達の方法」がどのように推移して行くのかを今は見守って行きましょう。

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