香港におけるコロナ対策の"新規軸"となった9月26日の発表から約1ヶ月半となる11月15日、香港政府トップの李家超(John Lee)行政長官は香港の"水際対策"について、所謂、全面的な解除を意味する「0+0」方式と言う表現を今後は使用しないと言う考えを示しました。
この発言の理由というのは、市場では既に(中国共産党が固守する"ゼロコロナ"政策との乖離を目立たせたくないという思惑ゆえ)と言う憶測が"確信事"のように論じられ始めていることに対して、一種の牽制的な意味合いを持たせる思惑があったことは間違いありません。実際の状態は表に出ていないこともあってこの議題はかなり"先んじた"ものになっているのは事実であり、今後の成り行きがち注目されています。
9月後半の新規軸発表の内容をまとめて見ると、先ず、1番の重荷になっていた入境者への強制隔離が撤廃されることは評価に値することです。この結果、3日間の行動制限(自主管理)で条件クリアすることが可能となり、その為外国との行き来についてはかなり"融通が効く"ものと変化しました。
その他の条件は以下の通りとなっています。
・渡航前(出発予定時刻)24時間以内に実施した迅速抗原検査の陰性結果を衛生省のオンラインサイトに登録(従前は渡航前48時間以内に実施したPCR検査の陰性証明が必要)。
・香港在住者(香港IDまたは長期滞在査証の保持者)に限り、搭乗前のワクチン接種完了要件を撤廃。
・空港到着時にはPCR検査を受検。ただし、空港内で検査結果を待つ必要はなく、公共交通機関などにて自宅や一般ホテルへの移動が可能。
・到着日を0日目として、0日目(上述の空港到着時の受検)、2日目、4日目、6日目にPCR検査を受検。また1日目から7日目まで毎日、迅速抗原検査を実施。
上記に補足する点があるとすれば3日間の健康観察期間中においてはワクチンパスが与えられ、黄色のQRコードが表示されることになると言うことです。この表示が黄色の間は公共交通機関の利用、出勤、ショッピングモールや百貨店、市場などへの出入りは可能ではありますが、飲食店やフィットネスセンター、また美容院などへの立ち入りをすることは出来なくなると言うことです。
このように従前と比較するとかなり緩和を推進したとの動きとなりますが、上述の通り、この段になって(湧き上がってしまっている)世論の論評とは別に、政府筋は今後のステップアップについてかなり慎重になっていることに注意する必要があります。では何故ここまで香港政府は保守的なスタンスに拘っているのでしょうか?
ご存知の通り、中国の中央政府の「ゼロコロナ」政策と言うスタンスが香港政府に与えている圧力は無視出来ません。故に、本点についてはやはり見逃せない原因の一つであることは容易に想像が出来ます。香港が"一国二制度と"言う特別措置を受けていると言う点を差し置いたとしても、やはり世界的なパンデミックに対する統一的な処方というのは中国ほどの大国になった国に取っては信用失墜を意味することであり、メンツに重点を置くこの社会主義国家に取っては"弱腰"と取られ兼ねない部分があるのは事実でしょう。
また、香港そのものが金融でその地位を構築したとは言え、あくまで今では中国内1都市であると言う認識は中央にはあり、何でもかんでも優遇する訳には行かないと言う意識も横たわっていることは確実です。
ただし、そうは言っても世界各国が緩和路線を引き始めているのは明らかであり、ここは順番として中国側でのゼロコロナ政策の緩和が行われることになったとするのであれば、香港が「0+0」へのステップを踏み易くなるのはあり得る話である筈です。仮に新規感染者数がこうしたステップ2でも平行線、或いは下降線を描くようになったとしたら、来年の旧正月以降の政策には大胆な進展が見られることになるかも知れません。
果たしてどのような結果が出てくることになるのかに今は注目して行くことにしましょう。