つい先月のこと(11月)になりますが、香港にとって名物的なイベントである「香港セブンズ」が約3年のブランクを経て開催されました。スタジアムは(香港が依然としてコロナ体制下であることを前提として考えると)例年の通りとは行かなくても人々に"日常が帰って来た"と思わせるに足る動員を記録、関係者の期待を満足させるものであったことでしょう。
この、「香港セブンズ」という競技を改めて考えて見ると、この競技が特徴的であるのはゲームそのものを各チームが7人構成で行うと言う事であり、試合展開も(従来のラグビーより)一層スピーディーに進む傾向があると言う点があります。
参加国に目を移すと"ラグビー発祥国"であるイングランドを筆頭として他のコモンウェルス諸国(例:アイルランド、オーストラリア、ニュージーランドなど)、「香港セブンズ」の地元である香港、そして日本、韓国と言ったアジア圏からの参加国、更には(前回の優勝国であった)フィジー等のアイランド系等々...、あわせて16カ国によって対戦が構成されます。
そして「香港セブンズ」と言うイベントは、『ワールドラグビーボールセブンズシリーズ』のひとつとして位置付けられており、シーズン中にはF1グランプリのように様々な国を転戦しながら各ラウンドを戦って行くことになります。
また、通常香港での開催時期と言うのは3月〜5月(1回目)と言った春先になることが多いものではありますが、今回は香港政府にとって(コロナ禍などで大きくダメージを被った)観光業界"テコ入れ"的な意味合いもあったのでしょうか(?)、この時期での開催を踏み切る形になりました。ではこの「観光面」を含めた経済面での現状を冷静に分析して行くとした場合、現在の香港の状況にどれほどのプラス面が寄与されているのかどうか?ここで考察して行くことにしましょう。
現状の様々な材料を考えると、香港は今、"大きな岐路に立たされている"と言うのは間違いないことです。金融では何とか体裁を保つ位置を保持しているとは言え、今や人材面での流出は様々なセクターで論じられる課題であり、貿易面でも(頼りにしている)中国自体がコロナ政策の失敗&デモ、さらに米国との貿易戦争の継続による負荷で芳しくない状況に陥っているのが実情であり、その為、香港が香港単独として回復を促す仕掛けを作ることが急務であったという背景が存在します。
そこで(他国のコロナシフトの緩和に歩調を合わせる形で)観光業についてカンフル剤を打つ必要があった訳です。
しかしながら、「観光資源」と言う観点においては、香港は、どちらかと言うと、"乏しい"部類に位置付けられる地域です。勿論、中華に代表される食文化を挙げると世界でもトップであるのは事実ですが、それ以外の分野となると正直な話、競馬が思い付く程度であり、これと言ったものが存在しないと言っても的外れではありません。
特にスポーツイベントの分野ではこの"欠乏感"は如何ともし難く、野球やテニス、サッカーを思い浮かべたとしても人々がそれらに香港を連想して行くことにはかなりの"無理がある"と言うのが妥当なところでしょう。
故に「香港セブンズ」の開催と言うのは香港経済にとっても今後の観光を占う上での大きな試金石であったことは想像に難くありません。今回のイベントが今後の香港の収支にどのような影響を与えるのかは現時点では明らかではありませんが、少なくとも良い意味での貢献を実現出来たのであれば、それを持って成功と位置つけるのは悪いことではありません。
今後の課題を残しつつも、世間に対して自地域の存在を喧伝することが出来る発信が香港には必要なものであり、「香港セブンズ」はその為の有力なツール(道具)であるのは確実です。